第28話 コカトリスとウォーターベアのオムライス

「えーと?どちらさまかな?かな?」


さやか、混乱してどこかで聞いた口調になってるが一応受け答えは出来そうだ。


「マヤはねーマヤって言うの!ママに会いたいって言ったら好きにして良いって言われたから来たのー」


うん、さやかには勿論心当たりはありません。

だがケビンとルーシーの視線が突き刺さるのを感じる…


「えっと、マヤちゃん?マヤちゃんは何処から来たのかな?」

「んーとねーあっち」


ドアの方を指差す少女…可愛い…


「じゃなくて、私がマヤちゃんのママなの?」

「うん、皆が言ってたし匂いで分かった」

「皆?」

「あっ会ったらこれケビンって人に渡してって言われてた」


そう言って少女は着ている服を脱ぎだす。


「ちょっ!ちょっと待ってマヤちゃん!ケビンちょっとあっち行ってて」

「わ、分かった」


慌てて出ていくケビンを気にしないで服を脱いだマヤは着ていた服を裏返しにする。

するとそこにはポケットがありその中から手紙が出てきた。


「絶対に落とさないための服なんだってー」


パンツ一枚のマヤが嬉しそうに手紙を手に持って差し出す。

とりあえずこの服を考えたやつは変態だ!

えっ?筆者?じゃあ仕方ない。


さやかはその手紙を受け取りマヤに服を着せてケビンを呼び戻す。

そして、ケビンがその手紙を読み始めて…

その表情が険しくなる。


「なんでだよ…」


ケビンの呟き…


「この子に罪はないだろ…」


マヤを見つめて呟くケビン。

それからケビンの口から語られた話は胸糞悪くなる話だった。

この子は研究所が作ったさやかのクローンで成長促進でここまで成長したが結局普通のエルフと何も変わらない事が確認され研究は破棄される事となった。

だが、人口が減少している今エルフを人工的に作り出せるという一つの目的は達成されたので次からは子供が欲しいが出来なかった家に国が子供をつくって授ける形を取ることが決まった。

しかし、マヤは成長促進を行った為いつ死ぬかも分からないし成長促進の効果が途切れることは無いので長生きしても通常の10分の1位しか生きられない。

その為マヤ自体もどこかの家に子供として送ることも出来ず本人の希望の場所に旅立たせる、つまり放棄することが決まったというのだ。

それでマヤは唯一の同じ遺伝子を持つさやかの元へ行きたいと本人が言ったのでここまで連れてきた。

我々ではどうにも出来なかったっと悔やみの言葉と謝罪が最後に書かれていた。


「っと言うことらしい…」


さやかは泣きながらマヤを抱き締めていた。

ケビンの言うことが全てだ。

この子に罪はない、だったらこの子は幸せになる権利がある!


「マヤ?私と一緒にここで暮らす?」

「んと…いいの?ママと一緒にいても良いの?」

「良いわよねケビン?」

「あぁ、構わない一緒に暮らそうマヤ」

「ありがとう!」


二人はマヤを抱きしめ家族になることをここに誓った。

その時ルーシーはケビンの手から落ちた二枚目の紙を見て固まっていた。


『追伸、さやかさんの遺伝子を操作する時に一緒に預かってたエルフの体液を使ったので正確にはさやかさんともう一人のエルフの子供って事になります。本人に伝えるかはケビン殿に任せます。』


こうして、ケビンの家に家族が増えた。

その日はケビンの手作りコカトリスとウォーターベアのオムライスが出てマヤの喜ぶ顔を複雑な表情で見詰めるルーシーであった。

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