第25話 熊肉の野菜包み串

さやかの部屋のベットに腰かけてるルーシーはその上を手でなぞる…

何度もここでさやかと肌を重ねたのを思い出しているのだ。

そして、それを同じ様に思い出しながらドアに体重を預けてさやかは見詰めてる。


「さやか、もう分かってると思うけどゴメンね」

「ううん、あれは私の意思だから」


ルーシーが言うのは初めての時だ。

入れ替わりの魔法と共に催淫魔法をさやかに掛けて自分を襲わせた事を謝っているのだ。

だがそれ以降はさやかもルーシーに魔法をかけられる事なく関係を持っていた。

そして、それを受け入れるルーシーもまた同じ気持ちだった。

3人は3人ともそれぞれを愛していたのだ。


だが結果的にそうなってはいても最初はケビンの指示だったのは変わらない。

そして、ルーシーにとってケビンは例えさやかであっても譲りたくない男性なのだ。

幼い頃からずっと想い続けたその想いだけは純粋で一途な気持ちだけは譲りたくないし妥協もしたくない。

我が儘でも自意識過剰でもいい、この気持ちを失ったら自分が自分でなくなると考えているのだ。


「それでね、さやか…貴女とケビンの事は分かってるけど私もケビンの事を諦めるつもりはないの」

「うん」

「だから、私今夜ケビンにアタックする。結果は見えてるけどそれでもこの気持ちを伝えたいの」

「うん」

「だからそれまでは…私が振られてここを去るまでは今まで通り接して」

「うん?」


ルーシーだけは気付いていない。

ケビンもさやかも二人とも二人を愛しているのにルーシーだけはケビンはさやかだけを愛していると考えているのだ。


「あのねルーシー…」

「大丈夫、私の覚悟は決まってるから。それに、こんな二人とも愛してしまった変な私の事なんかケビンが認める筈はないし安心して」


ルーシーにとってこの世界の一夫多妻制はそういう制度があって認められるってだけで周りにそんな家庭がなかったので、現実味がなく念頭から外れ非常識と考えられていた。

人とは誤解や勘違いをせずにはいられない生き物でそれは進化したエルフも同じだった。


「違うの、ルーシー聞いて…」

「いいの、何も言わなくてもいいのよさやか」


そう言ってルーシーはさやかを抱き締める。

口付けはしない、ルーシーはさやかを愛しているがケビンの事を考えると、もう出来ないのだ。


「さっ、ケビンの手伝いをしに行こっ」


さやかの体を解放したルーシーは部屋を出ようと話しドアノブに手をかける。


ドアにもたれ掛かっているさやかは頷いてドアから離れる。

ルーシーの今夜の告白にケビンがどう答えるのか、それによってルーシーが居なくなる…

それを考えるとさやかは胸が苦しくなって言葉が出なくなっていた。


「ほら二人とも今日はあの時の熊肉をバーベキューにしたぞ」


外から良い匂いが漂っていたので玄関から出るとそこでケビンがバーベキューを始めていた。

さやかとルーシーは3人で笑いながら食べれるかもしれない最後の食事を堪能するため笑顔で受け取った。


「ちょっと!なんで私のだけ全部野菜なのよ!」


ケビンに手渡された串を見てルーシーは怒る。


「よく見ろよ、野菜で熊肉を包んで串に刺してあるんだよ」


キャベツみたいな野菜を噛むと中から肉汁が飛び出しルーシーの顔を汚す。

それを見ていたさやかは塊を一気に口の中に入れて租借する。

ケラケラ笑うケビンに二人とも彼を前に上品に食べようとしていたのを忘れ普段通り食事をするのだった。

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