第24話 熊肉のバーベキュー

「これは一体どういう事だ?!」


ここは研究所内、責任者のハルマは報告書を読み上げている男に怒鳴っている。

それもその筈、現在さやかのDNAや遺伝子の調査をしているのだがケビンから提供されたモノと違いさやかのDNAも遺伝子もエルフに近いモノに変わっていたのである。

それはルーシーと同じであった。

俗に言われるハーフエルフと呼ばれる人間からエルフへと進化の途中である血が混ざった状態と同じなのだ。


「ハルマ様、これでは・・・」

「分かっている!」


ハルマは今回の件で国からかなりの補助を受けていた。

それは実在する純粋な人間を手に入れてエルフを救えると宣言していたからである。

もしもそれが叶うならこの世界のエルフを人間に近付けさせ出生率を上げ絶滅の危機を脱せられると超え高々に宣言していたのだ。

しかし、ケビンの元から連れてきたさやかもルーシーもその存在はハーフエルフと変わらない。

これがもし国にばれたらハルマは確実に終わりだ。


「仕方ない、あれを成功させるしかない」


ハルマは最後の手段である遺伝子操作によるクローンもどきを作成する計画を実行に移す・・・

しかし、それは彼等の破滅を招くパンドラの箱であった。

遥か昔、娯楽の一つとして映画と言うものがあった。

それは人が想像で来うる様々な物語が作られその中で遺伝子を操作されてクローンとして作られた生き物は全て人ならざる化け物となっていたのだ。

フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの言葉にもこうある・・・

『Anything one man can imagine, other men can make real.』

日本語に訳すと『人が想像できることは、必ず人が実現できる』である。

そして、この後ハルマは残っていた髪の毛や体液を使って遺伝子操作されたクローンを作成する事に没頭しさやかとルーシーへの興味は完全に無くなった。


こうして、ハルマから完全に忘れられた二人は軟禁されたまま時を過ごした。

そして、その日が来た・・・

結論から言うと遺伝子操作された人間のクローンは完成したのだ。

そして、それは・・・エルフだった。

神は自らを模して人を作った。

しかし、それは神ではなかった。

そして、人は自らを模してエルフを作った・・・

しかし、それは人ではなかった。

それがハルマの手で証明されたのであった。


その結果を記にハルマは研究所を去ることとなった。

二人の処遇も何の役にも立たなかったと言う結論だけ残され元のケビンの元へ返される事となった。






「以上が今回の結末となります。」


ケビンの家にさやかとルーシーを連れてきた研究所の人間が話していた。

結局ケビンの行動は最善を尽くされた結果となったのだ。

もしあと1日戻ってくるのが遅ければ取り返しの付かない結果が待っていたかもしれないが結果的にケビンもさやかもルーシーも助かったのだ。


「それでは私はこれで失礼します。あぁそれと、お二人は我が国の国民としてこれからも生活できるように手配させて貰いましたのでこれを渡しておきますね」


そう言ってさやかとルーシーのステータスプレートをケビンに手渡した。

こうして研究員は帰り、ケビンの家にさやかとルーシーが残された。

元の生活が戻ってきた。だが3人の溝は深いまま残されていたのだった。

それでもいつも通り接する為にも一度しっかりと話し合いをしなければならないと考えたケビンは冷凍保存してあった熊の肉を使ってバーベキューの準備を始めるのだった。


そして、さやかの部屋でルーシーは一つの結論を出していた。

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