第18話 蟹塩飴

「やぁさやかちゃん」

「あっプアールさんこんにちわ」


さやかは体にロープを巻き付け自分よりも大きな2メートルくらいの大岩を引きずりながら山道を登ってダイエット中だ。

あれから徐々になんてレベルでないほど筋力がアップしてケビンの話が本当だと自分の体が証明していた。

2.3日は太り続けたのだがケビンに「騙されたと思って1週間ダイエットしながら様子を見てごらん」っと言われた通り4日目くらいから体重が減り始め今では元の体型に戻っていた。


あれ以来ルーシーは何だかんだ文句を言いながら仕事が休みだったり暇な時は一緒にトレーニングに参加してくれる。

終わってから一緒にシャワーを浴びる時にいつも仲良くしちゃってるのはケビンには内緒だ。

いや、別に私にそっちの気があるんじゃなくて、ルーシーだから…

なんか昔、薄い本を持ってた知人が言ってた台詞と被るからこの話はこれで止めとこう。


んでだ、目の前にいる馬と牛とラクダを合わせたような変な生き物がヤムって動物だ。

そのヤムに荷馬車を引かせているのが行商人のプアールさんだ。

このヤムは昔遺伝子操作で作り出された生き物らしく生命力も繁殖力も強く、食べても美味しいし家畜としても優秀、更に毛は色々と使えるし骨は粉末状にしてお湯で割ればヤム茶って言うお茶になるとても凄い生き物だ。


「今日はアレ在ります?」

「あぁ、あるよ。ほらっ」


そう言って出された物を私は喜んで受けとる。

女性の必需品である生理用品と下着類である。

これはルーシーに教えて貰いケビンに見付からないように購入するにはこうやって外で行商している人から買うかルーシーにお願いして町で買って貰うかしかないのである。

まださやかは町には行ってない、っと言うのもエルフの町には住民票代わりのステータスカードってのが無いと入れないと言うのだ。


要は罪人や盗賊みたいなエルフから町を守る為のルールらしいのだがさやかはケビンに会えなかったら本当に詰んでいたとその話を聞いた時は思ったもんだ。


「それじゃこれ代金です。」


私はケビンの仕事を手伝って得たお金を支払う。

家事をやったりする分は家賃と食費で相殺してもらいその他の素材集めを手伝った分の給料を貰っている。

今私が腰に紐を巻き付けてダイエットついでに運んでるこの大岩も素材の一つだ。

この中に魔光石ってのが含まれてるからそれを取り出すためケビンの加工場まで運ぶのだ。

この魔光石は魔力を込めると光るのでライトやランプに使われる消耗品なので買取り価格も安定して扱いやすい商品らしい。


「はい、確かに。これはおまけだよ」


プアールはいつもの塩飴を差し出しさやかはありがたく頂く。

この時代でも汗をかいたら塩分補給が推奨されるらしい。

ちなみにこれは塩蟹という殻が塩で出来てる蟹の殻から作った飴らしく甘じょっぱいのに蟹の風味が広がる凄い美味しい飴なのだ!

さやかは始めて食べた時は驚いて涎を垂らしたほどだ。


「しかし、さやかちゃん力強くなったねぇ~」

「そうなんですよ~自分でもビックリで…」


そう、ダイエットのおかげか体格はそんなに変わらないのに力が凄く付いた。

試しに片手懸垂とかやってみたら軽々と出来て驚いたほどだ。


「そうだ!もし良かったらこれに出てみないかい?」

「なんですこれ?」


それはチラシだった。

山の下の町で年に2回行われる運動会みたいなモノの広告だった。


「お祭りですか?」

「まぁそんな感じのものだね、入賞したりすれば賞金も出るし興味があるかい?」

「うーんちょっとケビンに聞いてみないとですね」


興味はある、だがプアールは知らないのだがさやかは町には入れないのだ。

さやかは一応は耳が生まれつき両方短く黒髪の黒目と言う珍しいエルフと言うことになっている。

まぁ薄々感づかれてはいるかもしれないがそれでもお客さんを詮索しないのは商売人の鏡と言えるだろう。


「良かったらチラシ持っていくといいよ」

「あっありがとうございます」


さやかはチラシを受取り町の方へ進み出すプアールを見送ってから再び坂を岩を引きながら登り出す。

手にチラシを持ったまま…

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