第17話 一角ウサギの串焼き
「ダイエットが必要なの!」
仕事から帰ったケビンに送られた第一声がそれだった。
ケビンもその言葉を聞いてさやかの姿を見てやっと気付いた。
いや、突然数日で目に見えて太るなんてありえないと念頭にあったため見て不思議に思ってはいたが女性にあまり免疫の無いケビンはそういうものだと考えていたのだ。
親しい女性なんてルーシーくらいなので仕方あるまい。
「この世界の食事のカロリーが異常だと分かったから出来れば今日からの食事は一日1000キロカロリーくらいに押さえてほしいんだけど…」
男だが一応は考古学の研究者、何処でどんな知識が役に立つか分からないので雑学から力学まで一通り学んでいるケビンの答えは…
「無理だ」
これも仕方あるまい、1000キロカロリーと言えば野菜だけでも3食々べれば超えてしまう。
それだけこの世界の食事は高カロリーなのである。
しかし、それには理由があった。
この時代には魔法が存在する。
実は過去に人間が空気中に存在できるナノマシンを開発しそれを地球に解き放った時から地球に魔法と言うものが生まれた。
だがこのナノマシン自体が高カロリーな物質でそれが水から生物まで全てに浸透し進化の過程で無くてはならない存在となった。
そう、魔法とはこのナノマシンを使用して体内のエネルギーを使い発動するのである。
その為、魔法を使えるだけで常時カロリーを大量に消費する生態が完成していたのだ。
それを知っていたケビンはさやかにそれを説明し解決策を提示した。
それは…
運動して体を鍛えて常にカロリーを消費できる体を作ればいいと言う事であった。
「運動してダイエットで痩せれる?無理でしょ」
そう、さやかの常識でスポーツをしている人間がエネルギーを大量に消費するのは当たり前だが一日に10万キロカロリー以上を消費できる運動なんか有り得ないのである。
だがケビンの説得はさやかに希望を与えた。
曰く、ナノマシンを口にしているさやかの体は異常なほど活性化しており今から付けた筋肉はナノマシンを必要とする筋肉になりそれが定着する頃にはさやかの細胞自体がナノマシンを取り込みエルフ達と同じようにそれが普通になる。
それは実際に歴史が証明していた。
ナノマシンが世界に解き放たれた時はまだ一部の地域でしか増殖しながら広っておらずその地区の食事を取った人達はさやかと同じ道を辿ったのだ。
こうしてケビンに説得されたさやかはダイエットを開始するのであった。
ルーシーと共に…
「なんで私まで~」
「私達親友でしょ?」
「うわぁぁぁぁん」
山道をジョギングする二人がその日から町のエルフに目撃されるのは直ぐであった。
「家でケビンがお昼用に一角ウサギの串焼き焼いてくれてるから頑張って」
「なにやってるのさやか!ほら気合い入れて走るよ!」
好物に釣られるルーシーであった。
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