第13話 手作りクッキー
最初の通報は事故の連絡だった。
居眠り運転をしてしまい気が付いたら対向車線を走ってたベンツを谷底へ突き落としていた。
直ぐに警察消防救急車に加えレスキューまで出動した。
崖下では運転していたと思われる男は即死。
夜中救助を開始したので視界も悪く事故の状況を判断する為警察がベンツに付けられていたドライブレコーダーを見た時に事態は大きく変わった。
そこには3人の声と人身売買組織の男と思われる声が入っていた。
直ぐ様現場の刑事に連絡して調べた結果車内から次々に出る捜索願いが出ている行方不明者の名前入りのリストに映像ディスク。
永久乃が指示に逆らい面倒臭がって毎回処分しなかった為それらが残っていたのだ。
しかも、中には売られた先の事まで記録されている物まであった。
直ぐ様捜査本部が立ち上げられ朝一番に一斉に名前が記載されていた関係者を取り押さえる異例の指示が出された。
一つ幸運だったのはさやかが到着していないという連絡が課長である只野の元に行っていたのだが只野は調教に失敗した娘を使って如何わしい事をしていた為、朝まで忘れて寝入ってしまったのだ。
そして、朝一番に全国の企業の重役を含む人身売買組織の一部が一斉検挙された。
決してニュースでは流れずにただ山中で死亡事故があったと小さく報道されるだけであった。
朝になりドライブレコーダーに残されていた声の主がリストによると尹小田口絵さやかさんだと発覚し救助隊が見つける30分前に車から抜け出して更に10分後もう一人も抜け出している事が分かった。
そして、現場で捜索が行われさやかの血痕を発見する。
しかし、不思議な事にその血痕は森の中の大きな木の中に続いておりそこで途切れていた。
更に捜査は続きリストの後半はこれから売られる予定の人物が載っていることが分かり分担してそれぞれの刑事が事情を聞きに出向いたのであった。
「そんな事が…さやかは?さやかは無事なんですか?」
「現在も捜索中だ。それで、勇治さんですね?今回の事故ですが不審な点が多すぎます。」
警察から説明され勇治を轢いた車が完全に不明と言う事、更に警察を呼んだ目撃者の電話番号が既に使われていないこと、最後に勇治の怪我は車に轢かれた後に誰かに付けられたとしか思えない怪我だと言うこと。
暫く警察と話をして警察側も二人は巻き込まれた被害者だと判断したのか「御協力感謝します」っと言い残して帰っていった。
そして翌日の朝、日本中を揺るがす大事件としてこの事件はニュースで取り上げられ二人の働く会社を含む物凄い数の企業が役員が逮捕され問答無用で倒産となった。
会社が閉まってたので仕方なくりあらは勇治の病室を訪ねており二人してこれからの生活に付いて話し合うのだった。
本人達は仕事を失ったが勇治の借金5000万円は無かったことになったのだ。
「ねぇ、勇治さん?退院したらお仕事探している間家に住まない?」
りあらと勇治の恋の物語はここから始まる。
**********
「それじゃあこれが最後の質問になるよ」
現在もさやかはケビンから色々と質問されている。
出されたクッキーはケビンの手作りと聞いて市販の物にも負けない美味しさに手が止まらずさやかはポーションで喉を潤しながら答えていた。
ケビンからではなく、さやかから答えているのはケビンの答える内容にさやかが驚いてケビンの質問に答えられなくなる可能性があると言われた為だ。
しかし、さやかは不思議な事ばかりを質問されていた。
生まれた西暦や生まれた地域の名前、平均的な寿命、世界の総人口。
そして、ケビンから聞かれた最後の質問が。
「最初に会った時に僕が話していた内容はどう聞こえてた?」
さやかは覚えている限り正確に伝えた。
「突然、ちょっと黙れこのムッツリスケベって言われました」
「ぶふっハッハッハッハッ」
吹き出すケビン、そして少しして落ち着いてから深呼吸をして真面目な顔をしてケビンは話始める…
「今から言うことは全て真実だから落ち着いて聞いてほしい、その後で聞きたいことに答えるから」
さやかはケビンの言葉に頷きケビンの言葉を待った。
「まず、僕はこう見えて考古学者でね色々と昔の事を調べて知ってるんだ。っで本題だ、まずここは君の言う日本と言う島が在った場所だ。そして、今の西暦は8215年だ」
「…………はっ?」
「そして、現在人間と言う種族はもう居ない。人間が作り出した技術で2000年ほど前に進化した人類だったのが我々の祖先で今は永遠の命を持つもの『eternal life』を省略して『エルフ』と呼ばれていた」
「えっ?えっ??」
「エルフの寿命は平均600年、だが寿命を伸ばした結果我々エルフは繁殖力を大きく失った。その結果現在生きてるエルフは世界で約5000万人にまで減ってしまった。そして、現在エルフが自らを人と呼ぶようになった。」
「…………」
ケビンの話は飛躍しすぎていてさっきまでバクバク食べていたクッキーを取る手が止まっていた。
「さて、ここまでが伝えておきたかった事だが何か質問とかあるかい?」
ケビンが聞いてくるが思考が定まらない、聞きたいことの前に今の話が嘘だと言ってほしい。
信じたくない、ドッキリカメラ成功と書かれたプラカード持って誰か飛び込んで来ないかと玄関の方を向いた時に玄関のドアが一気に開いた。
「ケビン居る?」
そこに立っていた金髪ポニーテールの美女を見て信じるしかないのかと考えた。
あの両方尖った耳がとても作り物には見えなかったからであった。
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