第10話 ポーション
「やつはとんでもないものを盗んでいきました」
熊に棄てられた永久乃を指差しながらその外人さんはさやかの方を見る。
そして、近付いて何かに驚いた表情を浮かべさやかの肩に手を置いて手がさやかの頬をなぞった。
「なっなにするんですか?!」
慌てて手を払い除けて後ろに下がるさやかに外人は…
「お嬢ちゃんおじちゃんといいことしようか」
「さ、触らないで!」
さやかは攻める外人に恐怖し両手で体を守りながら後ろに下がる。
それを見た外人は首を傾げて少し困った後さやかの方に手を向けて独り言を言い出した。
「チンチンプイプイ翻訳婚約」
意味不明な言葉と共に外人の手から青い光が出てさやかに当たる。
ちょっと怖かったがその光が暖かく感じ少し安らいだのでさやかは距離を保ったまま一体何をやっているのか見詰める…
やがて光が消えてさやかに向けてた手を下に降ろして外人は話し始める。
「俺の言葉が分かるか?」
今までと違い変なことを言わなかった外人にさやかは…
「貴方は一体誰なんですか?」
「落ち着いてくれ、こっちも混乱してるんだがその耳を見る感じ君とそこの男はまさか人間か?」
「な、何を言ってるのか良く分かりませんが貴方も人間でしょ?」
「そうか…人間がまだ生き残ってたのか…」
男は独り言をブツブツ言いながら少し考え事をし出した。
そして、永久乃に近付き首もとに手を当て残念そうな表情を浮かべさやかに話しかける。
「すまない、俺がもうちょっと早く来れれば旦那さんも助けられたのに…」
「旦那?」
「君らは番だろ?」
さやかは今さっき我が身に起こった事を思い出して突然その場に座り込んだ。
色んな事がありすぎてさやかは感覚が麻痺していたのだ。
車の落下で本当に死にそうな目に遭って命かながら助かったと思ったら森でさ迷って、そして巨大な熊に襲われ危機一髪で助かったと思ったら助けてくれたのは訳の分からないことを話す外人だったのだから無理もないだろう。
「違います!」
さやかは外人に永久乃が自分の旦那だと言われたことに怒りながら否定をした。
ただでさえ趣味が悪く自分を貶めた一人なのにそんな風に見られることすら嫌悪したのだ。
「そ…そうか、ところで他にも人間の生き残りは居るのか?」
「人間の生き残り?」
「うーん、どうやら言葉も通じなかったしとりあえず、ここではなく森を抜けたところの家に来るかい?色々聞きたいこともあるし」
さやかは少し悩んだがここから出て警察に連絡させてもらえる可能性の方が助かる確率は高いと考えた。
「すみません、私自身も混乱していて。ご迷惑でなければお願いします。」
「分かった、俺はケビンだ。あんたは?」
「私は尹小た…いえ、さやかです」
「さやか、か…いい名前だな。それじゃ俺に付いてきてくれ」
そう言いケビンは歩き出したので永久乃はそのまま放置して私はケビンの後を付いていった。
そして、暫く歩き森を抜けた時に私は自分の目を再び疑うのだった。
山から見えた目の前に広がる町はレンガで出来た建物が建ち並び車のような物が空を飛んでいるようだった。
まるで、別の世界にしか見えない私は少しそこで立ち止まりそれに気付いたケビンは私が落ち着くまでそこで待ってくれていた。
「こ…ここは日本じゃないんですか?」
「日本?やはりそうか、積もる話は家の中でしよう」
そう言ってケビンが指差した先には木で出来たログハウスの様な建物が建っていた。
ケビンに続き建物の中に入り玄関で靴を脱ぐ。
そして、案内された食卓テーブルに座って待つように言われケビンが飲み物を出してくれたので頂く。
「美味しい…」
それは不思議な味だった。
濃厚なカルピスのような風味にも関わらずあっさりとしていてベタつかず喉を潤してくれる。
「良かった。ポーションの効果はあるみたいだね」
ケビンがさやかの左腕に目をやるのでさやかはその時初めて車のガラスで切ってずっと血が流れてたのに気が付いた。
家に入ってからも滴っていた血の後にやっと気付き自分の腕を見て更に驚く…
腕の傷が光の泡に包まれて消えていくのだ!?
驚きの連続で混乱しているさやかにケビンはゆっくりと話し始めた。
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