第3話 なんちゃってラザニア

「さやか君!さやか君!」


肩を揺すられ目を覚ましたのは会社の自分のデスクだった。

昨夜布団に入らずに寝てしまったので少し熱があるのだ。


「あっすみません課長」

「大分体調が悪いみたいだから今日は帰りなさい、これは業務命令だ。いいね、半休にしておくから」


うちの会社は相変わらず厳しい、まだ10時なのに半日働いたことにされて帰らされる…

頭の中では色々な事がグルグル回ってるがとりあえず父とは連絡が付かないのは確かだ。

母は既に他界しているので父は独り身、その気になれば直ぐに家を出て何処かに行ってもおかしくはないんだ。

だから昨日の事もまだ私は信じてない。


バスに揺られ一人で色々な事を考えながら薬局に寄っておでこに貼る熱冷ましとレトルトのお粥を買って家に帰宅したら…

父、尹小田口絵 覇王流星竜巻魁皇山が部屋の前に座って寝ていた。

まさか来ているとは思わなくてそこで少しの間立ち尽くしたのだがそこに声が掛けられた。


「おや、さやかさん風邪ですか?この季節は夜冷えますからねぇ」


昨夜来たあの男たちだった。

そして、その声で目を覚ます父。


「さ、さやか帰ったのか。すまないがちょっと匿って…」


そこまで言ったところでさやかの後ろにいた二人組が嬉しそうにしているのを見て口を開けたまま固まる…


「いや~探しましたよ親父さん、さぁ一緒に行きましょうか。大丈夫まだ片方の内蔵が残ってれば働いて残高も支払えますから」


この男は今何を言った?

内蔵が片方残っていれば?

えっ?どういうこと?


そのまま引きずられるように連れていかれる父を見てさやかは叫んだ。


「その借金私が払います!」


父は驚いた顔を向けていたがその言葉を待っていたかのように凄く嬉しそうに振り返った男は予め用意していたのであろう用紙を差し出してきた。


「それじゃ、娘さんに全て負担してもらうって事でこれがその書類だ」


そこには細かく色々書かれていたが総額5000万円の借金を月々30万円ずつ返す。

と纏めると書かれていた。

さやかはそれを受け取り父が何かを言う前に部屋に入り署名捺印して突き付けた。


「確かに、それでは月末に今月分頂きに来ますんでその時に。もし払えなくてもあんたなら風俗で直ぐに返せるから辛かったら言ってくれいい店紹介するからよ」

「心配しなくても払ってあげるわよ」

「そいつはどーも。それじゃまた」


男達はそう言い残して帰っていった。

横でずっと謝り続けていた父に優しく貯金があるから大丈夫と声をかけ部屋に入って夕飯を食べてから帰って貰うことにした。


そのあと、父と部屋で昨夜のシチューの残りと買ってきたお粥を使って使ってなんちゃってラザニアを食べすっかり定年を迎えてから小さくなった父の肩を揉みながら明日からの生活について考えるのであった。


さやかの借金残高5000万円

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