第4話 柔らかく煮込んだ芋と野菜のスープに玉子粥

父が帰ってから布団の中でこれからの事を考える。

貯金は150万円くらいあるから最悪は切り崩すとして仕事の給料が月25万円。

うちの会社は厳しいから仕事増やして残業を稼ぐなんて出来ないので稼ぎたかったら他で仕事して稼げってスタイルだ。

夜のコンビニバイトを週4回やって6時から12時までで約5000円の月16回で8万円。

貯金を崩しながら夏と冬のボーナスでなんとか補充すればなんとかなるか…


所詮卓上理論である。

大体月の生活費が月3万円で家賃混みとか絶対に無理だ。

だがさやかは深く考えなかったいや、考えられなかった。

そして、疲れたのかそのまま寝入ってしまったのだ。


さやかは忘れていた。

自分の体調が悪くて昼前で早退していた事を。

外がまだ明るい真昼なのに父に夕飯と言ってラザニアを作ったりしてたのである。

普通に考えて田舎から父がここまで来たとして夜の時間から実家に帰る便があるわけがない。

案の定さやかが目を覚ましたのは夜中の3時を過ぎた頃であった。


「げほっげほっ…なに?これ?視界が?グルグル回る…」


翌日、仕事に来なかったさやかを心配して同僚の和井さんが無断欠勤したさやかの様子を見に仕事帰りに立ち寄った。


「さやかー大丈夫?」


玄関前で声をかけるが返事もなく居ないのかと思って帰ろうとした時に咳が聞こえた。


「ごほっごほっ…」

「さやか?開けるよー」


玄関には鍵が掛かっておらず中に入った和井さんはさやかが布団から出ようとしてそのまま倒れたような姿勢で地面に転がり意識を失っているのを見つけ、直ぐに救急車を呼びそのまま総合病院に緊急入院することとなった。


診断結果は重度の肺炎。

さやかが意識を取り戻したのはそれから3日後であった。



「ん…ここ…は?げほっごほっ」

「さやかさん!」


丁度検診に来ていたナースがさやかの意識が戻ったのを見てナースコールを押し医者を呼ぶ。

ちなみに入院時さやかの苗字『尹小田口絵』が誰も上手く読めなかったので特別措置としてさやかのみ名前呼びする事となっていた。


「ごごば?」

「声を出すのも辛いでしょ?ここは総合病院よ、貴方のお友だちの和井さんって方があなたを見付けて救急車を呼んでここに入院させたのよ」

「患者の意識が戻ったのかね?」


白衣を着た頭の剥げたお医者さんがさやかの病室に来てそれから暫く診察を受ける。


「うん、これなら後3日も休めば回復しそうだな。お友だちの和井さんに感謝するように、彼女が助けを呼ばなかったら君は意識を取り戻すことなく死んでたのかもしれないのだから」


さやかは何か大事な事を忘れているような気がしながら同僚の和井に感謝する。

そして、少ししたらナースが病院食を持ってきてくれた。

喉が痛いくても食べられる柔らかくなるまで煮込んだ芋と野菜のスープに玉子粥であった。


体力の落ちきっていたさやかはナースの手を借りて少しずつ食べさせてもらい生きてることに感謝しながら一時の休息を満喫するのであった。

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