第7話 さ迷いとは彷徨いとも書けるが後者は名詞ではなく動詞と捉えられる
無限回廊と言えば分かる人には分かるだろう。
どれだけ進んでも同じ場所をぐるぐる回って永久に目的地に辿り着かない道のことである。
「これは確かめないと駄目ですね」
奈村は足元の『一』に線をもう一本足して『二』にして来た道を戻り出す。
このまま付け足して先に進んでも次の箇所に書かれている印が同じ場所に在ったものなのか元から書かれていた物なのかを確認する術が無いのである。
それよりもループを抜け出せるか戻った場所の印が『一』になってたら別の何かが惑わすために記していたと言う証明になるからである。
二人いるから片方が残りもう一人が進んでループを確認するという方法はこの場合決してやってはいけないことだと奈村は知っていたのだ。
居なくなる可能性、そっくりの偽物と入れ替わる可能性、一人だけ出られる可能性、一人になった瞬間に襲われる可能性…考えればキリがない。
「やはりループですか…」
戻った場所に残ってた印は『二』であった。
何者かが書き足した可能性は確かにあるが考え出したらキリがない。
ここで奈村は少し考える…
これが何かの謎解きだとすれば何かのヒントがある筈…今までにあったヒントなんて看板の『さ迷いの森』だけ…まてよ…
さ迷うとは、あてもなく歩き回る事や、目的地が分からなかったり見出すことが出来ない為に一か所にとどまらずに、あちこちへ動き回ったり行きつ戻りつしている様な状態の事でしたね…
「安居さん、疲れましたねちょっと休憩しましょう」
「えっ?あっハイ…」
奈村は地面に落ちている落ち葉を纏めて安居さんの座れるスペースを作る、続いて自分も座れるように落ち葉を集めてからそこに座り休憩をする。
「いや~最近日中にこういう自然に溢れた場所に中々出掛けられなかったから気持ちいいですね~」
奈村の他愛ない雑談、しかし奈村は実験をしているのだ。
そして…
「次は山なんて良いですね~山登りとかして言ってみたいですね『何故山に登るのかって?そこに山があるからさ』ってね、安居さんどうです?山に行きましょう」
「山ですか、良いですね店長と仕事の慰安旅行ですね」
安居さんのその答えに二人が山へ行きたいと言う気持ちが一つになった。
「じゃそろそろ行きますか、山に」
奈村がそう笑顔で安居さんに声を掛け二人は歩き出した。
そして、森が終わった。
それを見て安井さんは驚く…
「ど…どうして…こんな…」
「ここがさ迷いの森だからですよ、目的地を持たず進むと進んでいるのか戻っているのか分からなくなりさ迷うと言う森なんでしょうね」
奈村の答えに安井さんは…
「まさか店長…本当に店ちょ…」
そこで安井さんは慌てて自らの口を塞ぐのであった。
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