第6話 さ迷いの森
森の中と言えば獣が通った痕跡でその部分だけ草木が避けているようになっているという情景が思い浮かぶのか良くある話なのだがそこはまるで違ってた。
その部分だけ人が通れるように人の手が入っているとしか思えない様に道が出来ていた。
「これで石畳が敷かれていたら神社に続く通路みたいですね」
言い得て妙
例えが上手い時に使う言葉だ。
奈村の発言に安居さんはその言葉が頭に浮かんだ。
木々が密集している周りには光が全然入らず今進んでいる道だけが太陽の光により照らされている。
その木々の間が近すぎるのを奈村は横目で有り得ない状況だと言うのを理解しつつ口には出さずに先へ進む。
木と木の間が近すぎるのにこれだけ成長しているのなら根は一体どうなっているのか?
そんな興味も湧きそうになるが暗く中が見えない森と言うのは中から何が飛び出してくるか分からない。
誰もがよく知る歌でも熊さんが森には出てくるので警戒しない訳にはいかない。
奈村は暫く進んだ時にそれに気付いた。
「当たり前すぎて気付かない事ってやっぱりあるんですね」
「どうかしたんですか?」
奈村の言葉に安居が森に入って初めて口を開いた。
奈村の後ろを歩いていた安居は奈村が一体何に気付いたのか興味を持った。
「いえ、これだけ木々が生えてる森なのにですよ…静かすぎるんです」
そう、森と言えば野生の獣が現れなくても鳥や虫の類いは普通居るものである。
なのに森に入ってから鳥の声や虫の羽音も何も聞こえてこないのである。
「それとですね…」
奈村は視線を足元に落とした。
つられて安居も足元を見る。
そこには『一』と横線が書かれていた。
「100歩前に空を見上げた時に足で書いておいたんですがどうやらループしてるみたいです」
安居はただただ驚くのであった。
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