第4話 様子のおかしい安居さん

「安居さん?安居さん?」


奈村が三角座りで頭を膝に押し付けていた安居さんに声を掛けると安井さんはゆっくりとその頭を上げた。

その顔は泣き腫らした後のように目が真っ赤になっていた。


「てん…ちょう…」


こんな場所に一人何時間も居たから辛かったのかもと一瞬考えたが奈村の顔を見ても安居は悲しそうな顔をするだけだった。

様子がおかしいのは直ぐに分かったが女性が泣いていて話したがらない場合は無理に聞き出さずドンと構えて何かあった時に支えてあげるのが男の役目!

そう考える奈村は多くを語らず。


「怪我はありませんか?」


その一言のみでいつもの笑顔を向けるのであった。

いつもと変わらない奈村に安心したのか怪我はないかの質問にコクりとうなづきを返し、本の森のエプロンをした姿で立ち上がった。


ここで手を貸した方が良いと思う若者も居ると思うがそれは握手だが悪手だ。

現代日本では女性に触れると言う行為事態が絶対必要と認められない場合以外は絶対に触れては駄目なのだ。

後ろを歩いていた、道を聞いた、それだけで通報され事案となる現代ではたとえ仲間意識が強い同僚であっても特に上司部下の関係であれば尚更触れてはいけない、女性はパンドラの箱なのである。 by.民明○房


立ち上がった安居さんは何やら奈村の方をチラチラ見ながら何か様子がおかしい…

まるで何かを伝えたいが伝えられないといった感じだ。

場の空気を良くするため話題を考えた奈村は…


「それにしてもここは何処なんですかね?私の見立てでは太陽の位置と現在の時刻を計算して地球じゃあり得ないって結論に至ったんですが」


奈村のその言葉に何故だか『またか』と言った感じの表情を向けて海を指差す。

一体なんだろうと奈村は視線を向けて驚いた。


「なんと…」


そこには月が見えていた。

日中でも月が見えることがあるのは別に珍しい事ではない、問題はその形であった。

海の上に浮かぶように見えているその月の形は円形ではなくひし形であった。

それはこの世界が地球ではないという事を確定させる確実な証拠であった。

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