第14話【夕焼けの決意】
心がウキウキする。こんな気持ちになるのはいつ振りだろう。
もうしばらく、こんな気持ちになっていなかった。こんな気持ちにさせてくれるのもこの人のおかげなんだ。隣をモソモソと歩くリサを見つめる。「ねぇカフェはまだかな。」
「大丈夫、もうすぐ着くから。ほら。」視線をある一点を見るように奈緒子に促す。
「見えないよ。」と目を凝らす奈緒子は頭一杯に?マークを作る。
「着いたよ。」急に立ち止まるリサ。
『こ、ここがかー』と感慨深い声を上げる見上げたそれは、建物の一階の部分が建物の外壁に埋め込まれた形でそこにあった。
「ここが、オススメ第1店目の
*
『ここがカフェかー。いいなー』
「いい香りがする、これがカフェの香りかー」
「いや、紅茶の香りだよ。」
初めて訪れたtea cafeに、はしゃぐ奈緒子をリサに静かになだめられ頭をポリポリと掻く。
「うーん。何を頼んだらいいか分からない......」
席についでにメニューを片手に頭を悩ます。
「ダージリンかアッサムがいいよ」
「だーじりん?あっさむ?」
サッパリ分からないとゆう顔をしてくる奈緒子。
「簡単に説明するとね、アッサリしたアイスティーならダージリン。ミルクを混ぜてかまろやかミルクティーにしたいならがいいならアッサムだね」とリサが応える。
「なるほどー、じゃあリサちゃんと同じので。」
「ん、もしかして紅茶は初て?」
さっきから抱いていた疑問を投げ掛ける。
「うん。コーヒーしか飲んでこなかったからさ。他はあんまりなんだ。」
「そうなんだ。でも、仕事中はそんなことは言わないほうがいいよ。」喫茶店員としてあるまじきことを指摘される。
*
「お待たせしました。」
『どうもありがとー。良い匂いー』
陶器製の華やかな花柄のデザインが描かれているティーホットを見て感激する。
高らかに注がれた紅茶がティーバリスタの手によって二人の前にて差し出されれる。
「はじめまして、今日は楽しんでいってくださいね。」と上品にお辞儀してお盆を大事そうに両手に抱えて奥へと下がるバリスタ。
ぽーっと彼女が下がる様子を見送り、
スッとティーカップに手を伸ばす。『いただきまーす。』
その様子を横目に見る奈緒子は紅茶を優雅に一口くちに含みコクリ。
『凄いね!まるでお嬢様みたい』。
「そうだよね華やかなのティータイムだよね」
『うん。今のウェイトレスさん、フワフワしてお嬢様みたい!』と鼻の穴を膨らませる。
「紅茶じゃなかったんだね......」
「いや、紅茶も美味しいよ。」
ティーカップをカチャンとソーサーに置く。
そう、丁寧に。
「さっきの店員さんは凄いね。お客さんをこんなに良い気分にしてくれるなんて。」
「そうだね、凄いね。」
リサは同調して相づちを打つ。
「そうなんだけど、私はダメだなぁ」と頭を抱え奈緒子は不意に暗い顔を見せる。
「奈緒ちゃん?...」リサが心配そうに覗き込む。
『いや、なんでもないよ!紅茶があまりにも美味しかっただけだから。だから...』
「そうなんだぁ、分かったよ。」
「うん......」感傷の雰囲気が漂う。
「おかわり、する?」
「う、うん貰おかな。」
宛てが外れてしまったけどこれでいいかな。
再び、あのフワフワしたバリスタが訪れる。
「どうですか?楽しんで頂いていますか。」
『もちろん!美味しい紅茶をありがとー。』
「それはそれは、楽しんで貰えて良かったです。」
本日、二回目の対面に少し緊張がほどけた気がした。
*
『『ご馳走さまでしたー』』
紅茶を堪能した奈緒子とリサの二人は、次なるカフェに向かう合間のこと『いやー、美味しかったー。あと、バリスタの人良い人だなぁ』
「そんなに楽しかったんだね。
良かった。」と優しい笑顔でリサ相づちを打ってくれる。
「わたし決めたよ。あんな接客をお客さんにして上げたい。」自然とさっきのティーバリスタの姿が脳裏に浮かぶ。『そして、いつか全てのお客さんに寄り添えるようなコーヒーを提供できるカフェを開きたい!』
「まさか、いきなりハードルを上げていくんだね」とリサは苦笑する。
「へへっ、ダメかな?」
『ダメじゃないよ!』
「リサちゃん...」ハッと自分がいつになく大きな声を出してしまったことに驚くリサ。
「それなら、その夢を手伝わせて」と奈緒子の手を握りしめる。『うん、分かった二人の夢だね。』リサの手を握り返す。
コーヒーを提供するだけでなく、街中の人達に憩いの場所を与えていきたいと決意する二人を背に夕焼けが赤く染まっていた。
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