第12話【魔法のように。】
誠一郎とリサのおつかいの間に
奈緒子はマスターから、コーヒーの抽出指導を受けていた。
円錐形のドリッパーに同形状のペーパーフィルターに中細挽きの珈琲粉が落とされ、少量のお湯で粉の上に丁寧に落とされていく。
しばしの間が空く。
そこからはシルバーに光輝くシルバーのケトルからリズミカルにテンポ良くお湯が注がれていき、モコモコと泡を立て珈琲か膨らんでいく。2週、3週と綺麗な弧を描き注がれていく液体はコーヒーサーバーにはあっとゆう間に黒く染まったが溜まっていく。
この店でのドリップ方式は
「さあ、次はやってみて」マスターからケトル手渡されて
「確か、始めに珈琲粉に少しのお湯をかけて..わあ!」かけ過ぎた。まぁいいか。
勢い良く注がれたお湯の勢いで敷き詰められた珈琲粉の中央に大きな穴ができる。
はぁーとマスターのため息が聞こえてくる
なんの!まだ始まったばかりと気を取り直して次の手順にと移る。
「ゆっくりと回しながら、そーっとっと...」
ドバッちょっと勢いが強過ぎたかな。
大丈夫!イケるイケる。
と、2湯目・3湯目を終えた。
「ふぅー 上出来。上出来。」
ドリッパーの中に広がる、どぶ川が腐ったようなそんな有り様だった。
満面の笑みを浮かべる奈緒子をマスターは、
下手物を見る目を向けていた。
「よ、よし終わったみたいだね。大丈夫...上手いよ。」
『そうかな。それなら明日からでも、この私を新人バリスタとして使って下さい。』と得意げになる。一つ間を置き、「もう少し、練習してからにしようか。」お店の為に。
とその提案はマスターによって阻まれる。
それでも、カウンターの空間には
気付くと奥で寝てばかりいた
マシロが近くでじーと指導風景を見つめていた。
「楽しそう。代わって。」と手を差し伸べる。
「困ったなー...じゃあアレをやって貰おう。」とマスターは丸いフォルムのコーヒーカップを用意して何やら大きな機械の前で作業師始める
ガーッジャラジャラジャラとうるさい音がしたと思ったら機械にセットして...
『長いよ』と顔を膨らませた女の子を手で静かに制す。
「ちょっと待ってね。これから
面白いものを見せてあげるから。」とニンマリ微笑む。
コップをノズルの下に置き、即座に次の動作に入る。ピッチャーに牛乳を入れてスチームノズルでガシャガシャと泡立てると同時にミルクを適温にと温めていく。
その間に色鮮やかな茶色の液体がコップの中に少量ながら注がれていく。
『たったこれだけ。』と目を丸くするマシロに「これからだよ。」
片目をつむる。
ピッチャーを再び持ちトントンたテーブルで叩くときめ細かいミルク泡がキレイに出来上る。
それをマシロに差し出す。
綺麗に泡立ったミルクをマシロに見せると
マスターは、ピッチャーを優しく右手で包むように持ち
左手ではコーヒーコーヒーカップを少し下げて持つ。
華麗に右手を動かし気が付けば
カップの上にミルクで綺麗なハートが
描かれていた。
目にも止まらぬ早さでまるでそれは『わぁー魔法みたい。』
と呟き目を奪われる。
カップ内に並々注がれて今にも零れ落ちそうに注がれてたコーヒーを皿の上に置いてマシロの前に差し出す。
さぁ、おあがりな。」と優しくコーヒーを勧める。
「いいなー。マスターのカフェラテだ。」と奈緒子が羨ましそうに見つめられる。
「飲んでしまうのがもったいないなー」
マスターは黙ってスティックシュガーを差し出す。
だけどマシロは、そのままカップに手を伸ばす。
本当は砂糖を入れて甘くして飲みたいのだけどせっかくのアートを
消してしまうのは間違っている。
それくらい分かっていた。
ゴクリと一口。
あれ?......甘い?
砂糖は入れいないはずなのに甘い。なんでだろう。
「甘いでしょ。ミルクの甘味だよ。」とマスターは優しく教えて
くれる。
本当に優しい味だとゴクゴク全部飲んでしまった。
なんだか幸せな気持ちになり嫌なことはもう忘れていた。
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