第10話【刺激的な出会い】
窓際から入る春の木漏れ日。昼下りの店内ではランチタイムがラストスパートを迎えていた。「1番テーブルと2番テーブルにブレンドを持っていって!」
「はーい!」カウンターからのマスターの指示を受けて、コーヒーを運ぶ奈緒子。
その間にも返却口には空になったコーヒーグラスやカップが次々と置かれていく。
セルフの返却は回収する手間はないけど
洗い場に溜まるカップ等の物の量がえげつない。
誠一郎はBrist,sで相変わらず掃除や皿洗いばかり任されながらに集中して仕事に打ち込んでいた。でも、この忙しさが逆に助けになっていた。何もしないでいるとつい、リサのことを考えてしまうから。この忙しさに紛らわせなければ自分自身の気持ちをコントロールできない。
このリサへの想いに蓋をしていかなければだ。
「毎日毎日、皿洗いかー」
この喫茶店に補欠採用にしろ雇って貰うことが出来て一安心したのも束の間でくる日もくる日も皿洗いと掃除だけの日々でいい加減、嫌気が差してモヤモヤしてきてつい、声に出さずにはいられなぐぃ。
突如、パコンと頭に衝撃が走る。
「まだ、3日目でしょ!」
片手でチョップを作った手を払いながらリサが呆れ顔で冷たい視線をおくる。
「てへっ」
「あなたって人は...」
この人のことは、悪い人ではないと思うけど、どんな人かも分からない。
唯一、分かったことといえば、少し危ない人とゆうことだけとゆう印象を残してリサは少し距離感をとって対応する。
そんな二人の様子を見て、マスターは誠一郎を呼び止める。「ちょっと、いいかな。」
「なんですか?」なんだか無駄にソワソワしているマスターを見て嫌な感じがしながらも最後の皿を洗い終わり彼女の元へといく。「リサも、耳を貸してくれないかな」と誠一郎の隣に立つしてリサへと声かける。
リサの視線がゆっくりとこちらを捉えるのをを確認すると、マスターはニンマリして二人を交互に見る。なんだろうと誠一郎とリサは、困惑たお互いの顔を見合せ、マスターの答えを待つ。
「えーっゴホン。いきなりで悪いけど、リサには今日から橘君の指導係りになって貰うよ」と対して悪びれる様子なく突然の報告をするマスター。
「えっ..ええー」
「悪いけどって言ったよ。ごめんね」
笑顔で有無を言わせないマスター。
俺はとゆうと心のなかで、静かにガッツポーズをとる。
「じゃあ、これから二人で、おつかいに行ってきてくれない。」
「買い出しかー。どこまで?」
上機嫌だから何処へでも行けてしまえそうだ
「ちょっとそこまで!」
「いや、どこだよ!!」
いけね、思わずツッコミを入れてしまった。
「もしかしてキレてる?」
「いや...キレてないっすよ。」
と真顔で応える誠一郎。
「まっそうゆうことでお願いね」
マスターは親指を立ててウィンクする。
一人、声を殺して爆笑するパティシエがいた。
*
マシロは異世界喫茶Brist,sにに引きこもりとして居座るようになった。
未だ勇者死亡のショックから立ち直れずに布団の中で涙を流す日々をおくっいた。
「うぅっ...アウ、ル。ふえぇ...」
今や、休憩室は、マシロの専用部屋となっていた。誠一郎は支度を終え、その場を出ようとするが、すすり声を聞いてふと、マシロを見る。よく目を凝らして見ると、その頬は涙で濡れていた。見てはいけないものを見てしまった、そんな気持ちになった誠一郎は、何も見なかったことにしてそっとその場を去った。
*
「まったく、コーヒー豆の補充にはきを付けてとあれほど言っていたのに。それはいいとして、なんで...」と、リサは、おつかいのメモを片手に隣を見る。「悪かったな相手が俺で。」
「なにも、悪いとは言ってないけど...」
「けど?」
誠一郎が意地悪そうに聞き返して茶化そうとする。
「な、なんでもない!」とそっぽを向いてしまう。
......
再び沈黙が続く。
誠一郎は、リサ(沙織)と普通に話をしたいのに初対面でのあの一件以来、お互いの関係が可笑しくなっている。こっちはいつもと通りの感じで接したいだけなのに。
気のせいかもしれないけど、頭をガードしている感じがする。
そうこうしている間に目的地にと着いた。
店内には樽に入ったコーヒー豆が
各国の産地ごとに置かれている。自家焙煎店へと入った誠一郎は
コーヒー樽の中を見て、誠一郎は、「あれ?豆が茶色くない」と首を捻る。「本当だ、なんだかコーヒー豆じゃないみたい。」と二人して首を傾げる。
「いや、コーヒー豆だよ」
と奥のカウンターから声がする。
白い口髭を携えた一人の初老が現れた。
「コーヒー豆は焙煎して始め豆が茶色く色づいてコーヒーらしい香りを放つようになるんだ。まさにコーヒー豆がコーヒーになる瞬間だね」
二人はへぇーとコーヒー知識に耳を傾ける。
「あなたが
「いかにも。」「そうでしたか。今日はマスターの
「その制服はBrist,sだね。硬いよ気をほぐしていいんだよ。」
「ええ、マスターから頼まれてはまいまして。焙煎度は...誰でもコーヒーを楽しめるものを優しい味わいで」と後半を小さく呟く。
「優しい味わい?」横から誠一郎が不思議な顔をして尋ねてくる。
「な、なんでもない!!」とリサは誠一郎をを跳ね退ける。
「おわぁ」
ドンガラガッシャーンッ
異常な物音を立てて倒れる。
両手を頬に当てて頬を紅葉させるリサ。
「わかっているよ。いつもの中煎り《highRoast》だね。フフっと笑いながら応える。
「いいよね中煎り。美味しいよね。
「うん」「あと、コーヒー豆を焙煎しようと考えた人は天才だと思うな。」
「うん、うん」
「それと、コーヒーには香ばしい香りとのほのかな苦味が感じられてこそのコーヒーだからね。」
「うん、うん、うん。」
とリサの簡単な合図地なのに珈琲談義はヒートアップしていく。
どうやら焙煎のことになると熱くなる人なんだなリサは感じていた。
「おい、俺を置いてけぼりにしないでくれ。あれ、この音は?」と焙煎部屋から聞こえてくる豆と豆が当たる音とたまに聞こえるパチパチっとゆう豆が静かに煎られる音と店内に漂うコーヒーの良い香りで満たされていく。気付くとヴィモンさんは焙煎に取りかかっていた。純喫茶の気分に浸りながら待っている誠一郎とリサに小さなコップが差し出された。
「はい、出来立てだよ」黒い液体から湯気と共に放たれた魅惑を感じながらコップを手に取る。
「試しに飲んでいきなよ。嫌なことなんか忘れさせてくれるよ。」と焙煎仕立て挽き立てのコーヒーを手渡された。
香ばし香りが鼻腔をついて刺激される。いったい、どんな味がするのかと一口飲んだ誠一郎は驚愕する。それは、何がどう美味しいものなんてゆう言葉で言い表せるものではなくて今まで味わったことのない刺激的な飲み物だった。美味しいけど、今の自分にはこの美味しさを表現することができないことに歯がゆさを抱く。リサ以外にも深く知りたいことができた瞬間だった。
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