第6話 【終わりの始まり】
「くらえ、《スターダスト・シューティングスター》あれっ..勢い良くスター・ロッドから放たれた魔法使いのマシロの攻撃は、足場をもつれさせたせいで軌道を反らしドラゴン系モンスターの脇を通過して壁へと激突した。当たっていれば一撃で仕留めていたであろうことを物語るように直径5メートルの大穴が重々しく空いていた。
『くそー。まただ』とマシロは悔しがり地団駄を踏む。
だけど、モンスターが微かに怯んだのを、ここぞとばかりに勇者、アウルが一閃を喰らわせる。《エグゼクティブ・ライカー》体制を崩して倒れ込むモンスター。
「やったか。」と愛刀を鞘へと戻しドラゴンが倒れ込んだのを確認してモンスターに背を向ける。
と、その時。ゴアァァーと唸り声を上げて勇者目掛けて突進してくるドラゴンを間一髪の所で緊急回避する。「くっ...」
《
そんな彼らを呆気に取られて見てる白魔導師がいた。「やっぱり、皆は凄いやー。それに比べて...」と自分の無力さを恥じる。
いつも、マシロの尻拭いをするのは、このパーティーのリーダーでアタッカーのアウルと少し変わり者の黒魔術師のグレイだ。戦闘の後はいつも生傷を作って戻ってくる勇者をヒーラーのメイリィのヒールで回復する様子を遠目に見て思う。このままでは、いつか自分のミスでアウル達を殺してしまうのではないか。そんなことを予感していたマシロは、あることを心に決めていた。
「着いたぞ!」目を背けたい現実にただただ肩を撫で下ろすばかりだ。こんな、戦いなんて早く終わらせたいのに。身体が心がゆうことをきいてくれない。魔女が待ち構える玉座の間の前にて戦闘を率いる勇者・ヒーラー・黒魔術師そして、白魔導師は、決戦前の1分1秒を噛み締める。「皆、覚悟はいいか。」先頭に立っていたこのパーティーのリーダーは全体に向けて語りかける。「もちろん、俺の左手が唸るぜ。」黒魔術師のグレイは左手を掲げる。「うん。持ち前の魔術でぶちかましてくれ。」彼の病的発言を華麗に流すアウル。パーティーの指揮が高まったところで後方に引っ込んでいた魔導師が軽く咳払いをする。『オレ、この戦いが終わったらポーションをがぶ飲みするんだ。』と得意げに腰に手を当て、一気に飲みするモーションをとる。そんな皆の様子を優しい眼差しで見つめるヒーラーのメイリィは「飲み過ぎは駄目だよ。トイレに行きたくなるからね」と優しく一言。オカンかとグレイがツッコミにメイリィは苦笑する。皆、真剣な面持ちの中で白魔導師のマシロだけはどこか落ち着かない様子でモジモジしている。
少し考え込んでから想いを固めたかのように切り出す
「あの、ちょっとトイレ」と言っていったん陣形から抜ける
岩陰に身を隠し誰も見ていないことを確認すると魔方陣を展開してその上に立つ
「もう、いいよね...」と一言呟く。次の瞬間には、その場には石ころが転がるのみとなっていた。
そして、そのまま彼女は戻ることはなかった。
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