第5話 【答え】

鳥のせせらぎ、人々の賑やかな人々の会話。この世のものとは思えない爽快な気分でで覚めて最初に目にしたのは、知らない天井だった。そこでここが自分の部屋ではないことに気付いた。

ハッと我にかえりガバッと布団に覆い被さる。

それは、昨日の思いがけない出来ごとを思い出してしまったからだった。

1日の仕事を終える間際、失態を繰り返し、業務から離脱してしまった私はあれから...

そうだ!疲れが回復したから帰らせて貰おうと喫茶店の扉を潜った時のことだ目の前に広がる光景に圧倒されてしまった。

そこには、中世ヨーロッパを思わせる童話の中に出てくるような町並みが夕日を背に暖色系の煉瓦(れんが)作りの建物が映える光景がそこにはあった。自分はどこに来てしまったのだろう町並みが慣れ親しんだものから見知らぬ世界に変わっていることに

驚き、絶句する。自分は夢の中にでもいるのかと頭が混乱する。1人で見知らぬ世界に思いを馳(は)せていると、後ろから優しく肩を叩かれる


「お疲れ!」とにこやかにに一言。


そこで気が抜けていた私は、「はひっ」と拍子抜けの声を出してしまった。

「......」しばらくの沈黙。


「今日は、ありがとうございましたお世話に、なりました。」と貴重な経験のお礼を伝える。

「.行くんだね...」と期待が外れてしまったかのように一言。

「はい。」

...マスターがなんと言おうと自分の考えは変わらない。

...

でも、ひき止めてはくれないんだ...

......


嫌な間があく。

私は覚悟を決める。迷いはないはずなのに...

マスターは何も言ってくれないし。

「今日は楽しかった?コーヒーは美味しかった?」

マスターは,いきなり何を言っているんだろう?

そんなの答えは決まっている。

「はい!それは最高に!!」

うん、いい思い出ができて良かった.なぁ。

この場を去ろう、そこで自分が知らない世界を見て回るんだ。そう心に決めていると

「それじゃあ、明日から来て。厳しくしごくから覚悟しておくこと!」マスターからの予期せぬ提案にただ黙って頷くばかりでその日は終わった。ただただ疲れて魂が抜けたかのように眠るのだった。

そして、現在に至る。


そんなモヤモヤした気持ちの中でただ、 朝日が、窓を通して眩しく瞳に映る。


「願い、叶っちゃった。」

気がつくと頬を一筋の雫が流れていた。

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