第3話【出会い】




初の仕事とゆうことで、早くもお客さんからウェイトレスに早変わりした奈緒子はお客さんからの注文取りやホールでの接客を不慣れながらも、取り組んでいた。

私服の上からのエプロン姿はなんだか異様だ。

元々、お父さんが自営している喫茶店の常連さんの相手をしていただけだから、初めてのお客さんを前にして仕事をすることに少しの不安はあった。でも、何故だろう背中に羽が生えたかのように軽いのは。

これが、なんなのかはわからない

だけど動きやすいから気にしない。



でも少し残念に思うことがある。喫茶店での仕事を与えられたとゆうことで、てっきりコーヒーの抽出を任されるのかなとワクワクしていたのだけど、仕事とゆうのは、メニュー取りとお品だしだけでなんだか拍子抜けしてしまいながらも、初めての仕事に心を踊らせていた。


今度、バリスタさんと顔合わせたら訊いてみよう。

そうしたら、この期待の新人に任せてくれるかもしれないととウキウキしていると、カウンター奥から呼び止められた。

『ねぇ、ちよっと。聞こないの!アンタだよ。アンタ!おーーい!』

「えっ...」

いきなりの呼び掛けに戸惑ってしまう

こんな呼びとめ方ってあるのかな?

反応に困っているとさっきのパティシエの子が横から

「あの人は悪気はないから、気にしないで行ってあげて」と訂正をもらってカウンターにと向かおうとする。

するとそこには、バリスタがカウンターに立ってお客さんさんと談笑している姿があった

えっ...なんなんだろう、これは?!


でも、今は仕事中。

一生懸命に笑顔を崩さないように

バリスタの元へと向かうのだった。



いつでも、探してしまう。どこかに、君の姿を

街角の中、路地裏の隅こんなところにいるはずないのに。

気が付けば、いつも視線を走らせてしまう。

俺の願いは、一つ。ある日突然、姿を消してしまった沙織を探しだすこと。

だけど今は、そのことを頭の片隅に置いて

仕事に集中しないとだ。


お皿が一枚、二枚、3枚...ツルっ

ガシャーン。一枚割れた!

「いけねっ」テヘッ


「コラッ」

後ろから声が聞こえた。その声は、か細くも、透き通った通った声につい、目を細めてしまう。

それは、全てを包み込んでくれるかのごとく柔らかい声だ。でも、その声を俺は知っている。

お、お前は!?

後ろを振り返ると、目の前には清楚な印象を与えるも薄く茶色がかった髪をポニーテールでまとめ上げ、一通り成長を終えるもまだ幼さが残る顔つきで、儚くも強さの感じられる。そんな女性が眉間にシワを寄せてご機嫌斜めの様子で立っている。

思い過ごしでなければ、この人は...


「お前、紗織か!?」

本物か?? いや、できれば間違いであって欲しい気もするが。

その真意を確かめるべく頬を触り頭を撫でてながら1人、うんうんと頷く。

彼女は、身体を硬直させて「いや、ちよっと!うぅ...」と小さなかすり声を漏らしている。

ちょっと感覚が、違うかなと少しその状態で繰り返し頭を撫でていると、とそこに「やめ、ろー!」と、叫び声と共に痛恨の打撃を腹に喰らった。

「おわっっ」

が、くすぐったい...

視線を衝撃が加わったところに移すと、さっきの校生らしき女の子に頭でヘッドアタックをお見舞いされた。

「なにしてるんだ?こんなところで遊んで。今は、仕事中だろ」

「っ... そうですけど、あなたこそ何やってるんですか!??」

と怒りと焦りが混じる、不満に満ちた表情を向けて来る。

「あなたこそ、何をしているんですか?!今は、仕事中ですよ。」

「ナンパなんて...」と吐き捨てる

『ナンパだなんて!?』

「だってこいつは俺の...」

と言葉を繋げようとするが

目の前の高校生はそんなことはさせようとしない。

「俺の女ですか⁉」

「最っっ低ですね、初対面の相手によくも...」

「な、なんなの?? こんな人知らない。いきなり触っきて っ...」

それはもう、不審者に身体を触られたかの如く、膝をついて、肩を抱きながら震え、泣きじゃくる彼女がそこにいた。



頭をポリポリと掻き「気のせいか」と一言呟く。

自分の思い過ごしかと

ありえないことだと自分に言い聞かせる。


「大丈夫、立てる?」心配してパティシエの隣に駆け寄る。

なんでだろう、今日初めて会ったはずの目の前の子を前にこんなに心が暴れるのは。

心の動揺は止まらなかった。














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