第3話 納得

ピピノは項垂れたまま城に戻ってきていた。

あの後、両親どころか近所の人達も皆ピピノの事を知らなかったのだ。

知り合いが誰も自分の事を知らない状態になっているという状況はまだ14歳のピピノには辛い現実だった。

14年間生きてきた日々が全て否定された気になっていたピピノは完全に脱力したまま王の間に立ち尽くしていた。


「勇者様、実は文献にこう記されておりまして・・・」


目の前の王様が少し間を置いてからピピノに話し始めた。

曰く、文献によると召還された勇者は世界を渡る時に元の世界とこちらの世界のバランスを壊さぬように記憶が改ざんされ元の世界の人々の記憶から勇者の存在は元の世界に戻るまで無かった事になるというのである。

つまり、ピピノが持っている記憶はこの世界に来た時に改ざんされたもので本当の記憶ではないと王様は言いたいようである。

それを証明する為に勇者本人が混乱していたら自由に行動させ納得してもらうと良いと過去に召還を行った歴史を記した人物が記載していたらしい。

もしそれが本当なら元の世界に本当の両親が居て本当の生活がある。

そこに戻る為には姫様と契りを交わし子を宿らさせる事が必要であると。

認めたくは無いが状況が全てを物語っている。


ピピノは何故か自分でも驚く程それに納得しているのに驚いた!

その物分りの良さが自分とは違う人物の様で更に説得力を増していた。

ならばもしかしたら自分は14歳では無かったのかもしれないと考えた。

一応街中の窓とかに映りこんだ自分の姿は記憶にある元のモノと違いが無かったので最初は否定していたが気付けば完全に納得していた。


その後、王様達と共に豪勢な食事を頂いた。

今まで味わったことの無いような素晴らしい料理の数々に我を忘れてピピノは食べた。


「うむ、流石勇者様だ。見事な食べっぷりだ!」


王様の言葉はどこか本心では無い様な気もするが自分の娘をこれから孕ませるだけの相手に親切にしないと駄目なのだから仕方ないのかもしれない。

そう考えピピノは考えるのを放棄した。

食事が終わり、今度は風呂に入らせてもらった。

流石に王城の風呂を見た時は感動のあまり声が出なくなったのだが一緒に体を洗ってくれる女性の方が2名ほど付いてきてそれどころでは無くなったのは恥ずかしいので割愛したい。


そして、僕は今姫の寝室前に居る。

これからこの部屋の中で姫を・・・

僕は元の世界に戻る為、覚悟を決めてドアを開いた・・・

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