第2話 帰宅
「それではピピノ様、なにか質問とかは御座いますか?」
王の間にそのまま連れてこられたピピノは王座ではなく対面に立ったままの王に声を掛けられる。
勇者を見下す態度は見せたくないのだろう。
「すみません、本当何が何やらよく分からないんですが王様、僕はこの国の国民です!」
「フム…」
「名はピピノで町の方の4番地に住む父カイトと母メリーの子です!」
「ウーム…よし分かった。そこの衛兵勇者ピピノ殿に付き添って差し上げろ」
「ハッ!」
すんなり僕の言うことを聞いてくれた王様は何故か兵士を護衛に付けてくれた。
何かの間違いで勇者様と勘違いされたのを知った町の人が何かしてくるかもしれないからその護衛なのだろうか?
僕は兵士さんが後ろから付いて来てくれてるのに慣れないせいか緊張しながら城の門を潜って外に出た。
相変わらず町はお祭り騒ぎの賑わいだ。
その中を通り馴れた道を進み我が家へ向かった。
両親はきっと僕の事を探しているに違いない、家に居ると良いんだけど…
町の中を人混みによりいつもより少し時間をかけて自宅に戻ったピピノはいつものように元気よく玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
正面に母さんが立ってこちらを見ていた。
その表情に違和感を覚える、母の見た事の無いその表情はまるで知らない人に対して警戒をしているようだった。
「母さんただいま、良かった家に居てくれて。なんかね僕が勇者様と勘違いされたみたいでこの家の子だって説明してほしいんだ。」
僕の言葉で勇者と言う単語を聞いて母は何かに気付いたようにその場に膝をついて両手を合わせまるで祈るような姿勢で話し出した。
「これはこれは勇者様、我が家にようこそおいで下さいました。何もないただの民家ですが何か必要なものがあれば何なりとおっしゃって下さい」
僕は固まった。
母は何を言っているんだ。
僕が分からないのか?
毎日おはようとおやすみの挨拶は欠かさない一人息子のピピノだよ。
僕の脳内で思考が巡る…
その時、部屋の奥から父がやって来た。
父は僕の顔を見て母の姿勢を見て…母と同じ姿勢で屈みこんだ。
「これはこれは勇者様、このような我が家へ足を運んでいただきまして至極感謝の極みです」
父の無理に丁寧な言葉を使おうとして何かおかしい言葉になっているいつもの癖を見て、父だと確信するも自分の事が分からないのかと怒りが湧いてきた。
「父さん母さん何言ってるの!僕だよ!一人息子のピピノだよ!」
僕は声を荒げてそう伝えたが二人から返ってきた言葉に僕は立ち尽くすのだった。
「勇者様、我々はまだ子を授かっておりませんが…何かのお間違いではないでしょうか?」
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