今でも探しているよどっかに君のカケラを
地上に出た電車が止まり、寿司シャリからこぼれた米粒のようにホームに降りた男が、ふっと一息をつく。
棚上の、彼の赤チェックのコートは、電車と共に西へと並行し、地平線の彼方へ既に沈んだ太陽を、追いかけていった。
誕生日に、彼女からもらった事自体を、彼は失念していた。
年度末の車内は、暑かったのだ。
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