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ラジオのノイズから形を作り出せる能力を彼は持っていた。正確に言えばノイズのパーツから色や形状を示す数値を取り出してデジタル解析し、並べ替える。
この能力は彼が4歳の頃初めてパソコンをいじったときから備わっていたという。
彼は毎日孤独だった。無口な老人と2人きりで過していた。
老人は都市鉱山から色々な高価な金属を取り出す仕事の手伝いをしていた。
老人は送られてくる分解されたパソコンの中で動くものをおもちゃとして与えていた。そして6畳ばかりの狭い部屋には老人が子供のころから大事にしている、つまみの半分われたラジオからいつも音が流れていた。パソコンは殆ど動かなかったが、音声編集ソフトだけが唯一稼働した。録音と音を数値変換する部分だけである。そしてユーザーは数値変換したものを3Dグラフィックに立ち上げるという仕組みを作っていたようである。そのメカニズムを、ある時メモパッドであるアプリを立ち上げた時、不意に理解したとの事である。
彼はその日から熱心に雑音に取り組み、形状を鉄くずで作り続けた。
すると全く意味不明な形ばかりでもなかった。
例えば人のようなものがどこかの風景の中で動き回るというようなものもあった。
彼はそれを作為的に、つまり意図的に雑音を作り上げ、それをあるワンシーンに立体として現れるようにすることができた。
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