赤
そのビルには巨大な吹き抜けがあった。これは私の錯視かもしれないが、吹き抜けには赤い川が流れている。
最近私の色覚能力に自信が持てなくなってきている。
創造は次第に、巨大な中庭にある美しい庭園に煙を立て、溶かし始めた。
溶けるというならば、これは恐らく実際に起こっている事ではなく、錯視だろう。
それにしてもこの状態を放っておいて良いのだろうか。
私の瞳孔の中にマイクロフィルムがくるくると、ハツカネズミが遊ぶ乗り物のように回っている。目がゴロゴロする。眉間の後ろに鈍痛が広がっていく。取り去らなければならない。私は高速に瞬きを繰り返した。
一度目を傷つけそうなほど鋭く、フィルムはその先端は三角形に折られたようだった。慌ててこすると眼球の表面に傷がついた手ごたえがあった。
ふとした瞬間涙でポロリと下に落ちた。
吹き抜けの庭園は赤い川を流れさせることなく、相変わらず美しく存在していた。
落ちたマイクロフィルムは糸のように長く伸び、吹き抜けに貼り巡らされた落下防止の強化ガラスと床との間に滑り込んでいった。
床には微かにひびが入っていた。ひびは私の足元から廊下を横に突っ切っていた。直さなくてもいいのだろうか?今すぐ。
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