組織に逆らう事は自分の命を失う覚悟もしなきゃならないってこった。

同じ建物の地下に住んでいる豪じいさんが言った。

彼は銀細工を作っているという。そして私が発注している機械の最も腕の良い職人だ。

「おれはこうなっちまったけど、おまえはまだ若い。足を洗う方法は幾らでもあるはずだ。」

豪じいさんはガスバーナーに着火すると、くわえ煙草に火をつけた。

作りかけの指輪をピンセットで拾い上げると、接合部に火を当てた。


タバコの火とバーナーの火で、部屋はひときわ暑くなった。

地下の湿った黴臭さが燃えたようなにおいがした。



私は破れかけてスポンジ地の詰め物が飛び出ている、象牙色の背もたれのないソファに腰かける。これは元からここにあったものをそのまま使っているそうだ。この年齢の職人が選びそうもない、女性が好みそうなソファだった。どんなことをすればこんなにボロボロになるのだろう。ふと想像をめぐらせた。そして不意に恥ずかしい気分になって目を背けた。

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