緑
組織に逆らう事は自分の命を失う覚悟もしなきゃならないってこった。
同じ建物の地下に住んでいる豪じいさんが言った。
彼は銀細工を作っているという。そして私が発注している機械の最も腕の良い職人だ。
「おれはこうなっちまったけど、おまえはまだ若い。足を洗う方法は幾らでもあるはずだ。」
豪じいさんはガスバーナーに着火すると、くわえ煙草に火をつけた。
作りかけの指輪をピンセットで拾い上げると、接合部に火を当てた。
タバコの火とバーナーの火で、部屋はひときわ暑くなった。
地下の湿った黴臭さが燃えたようなにおいがした。
私は破れかけてスポンジ地の詰め物が飛び出ている、象牙色の背もたれのないソファに腰かける。これは元からここにあったものをそのまま使っているそうだ。この年齢の職人が選びそうもない、女性が好みそうなソファだった。どんなことをすればこんなにボロボロになるのだろう。ふと想像をめぐらせた。そして不意に恥ずかしい気分になって目を背けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。