第69話 自己紹介

 ジェドとシアが護衛の任務を受けたと言う事で、自己紹介をする事になった。


「え~と、これからしばらくご厄介になります。冒険者のジェドです。ランクはこの間『ゴールド』に昇進したばかりです」


 ジェドはペコリと一礼する。


「同じく冒険者のシアです。ランクは『ゴールド』です。よろしくお願いします」


 シアの方も簡単な自己紹介をする。先程オリヴィアに名乗ったのとほぼ変わらないが、別に喜ばせるような挨拶をしなくては、ならないわけでは無いのでこれで押し通す事にした。


「『ゴールド』か…あの年で…」


 レンドール側の護衛の中から感心したような声が発せられる。


「本来なら全員と…自己紹介と行きたいところだろうけど、時間はないから割愛するわね。でもこの人達とだけは名前ぐらい知っておいてもらうわね」


 オリヴィアは先程とは、うって変わってハキハキと場を仕切っている。どうやらこれが本来の彼女の姿なのだろう。


「この人達は私と一緒に『神殿内部』に入ってもらうから紹介しておくわね」


 オリヴィアの言葉にジェドとシアは訝しがる。


「他の人達は?」


 シアの言葉にオリヴィアは頷く。


「うん、彼らはレンドール領を守るという大事な仕事があるのよ。彼らの技量は決して悪いわけじゃ無いけど悪魔相手では勝手が違う。だから『エリメア』までの護衛が彼らの仕事なのよ」


 オリヴィアの言葉にジェドとシアは頷く。彼らの実力は決して低いとは言えないが魔物の相手慣れていないのだろう。もし、悪魔と戦えば多くの者達が命を失うことになるだろう。それはレンドール領にとって大きな損失なのだろう。オリヴィアを受けてオリヴィア達と一緒にいた者達が一歩進み出る。


 初老の老人、パワーファイター風の男性、金髪の美丈夫、同じく金髪の美少女の4人が進み出た。どうやら彼らがレンドール家が雇った冒険者グループなのだろう。


 まずは金髪の美丈夫が口を開く。


「俺はヴェイン=マクレガー。『プラチナ』クラスの冒険者チーム『破魔』のリーダーだ」


 金髪の美丈夫の名前はヴェインと言うらしい。落ち着いた感じから20代前半と思っていたのだが、19歳とのことだった。


「俺はアグルス=メーケインだ。年齢は31、フリーの冒険者だ。ランクは『プラチナ』だ」


 筋骨逞しいパワーファイターはアグルスというらしい。『破魔』のメンバーでは無いらしい。


「フリーと言う事は同じチームじゃないんですか?」


 ジェドの言葉にアグルスは笑いながら答える。


「ああ、何回か組んだことはあるけどメンバーじゃ無いな」

「そうそう、もう何回も組んでるんだから、入っちゃえば良いんだけどね」


 そこに令嬢役だった金髪の美少女が入ってくる。


「私はシェイラ=マクレガー。年齢は16歳。ランクは『プラチナ』あんまり見えないだろうけど魔術師よ」


 えへへと愛くるしく笑いながらシェイラと美少女は名乗った。


「マクレガー?という事はヴェインさんとは…」

「うん、兄妹だよ」

「なるほどね」


 言われてみればどことなく顔の作りが似ている。兄妹と言われれば納得してしまう。


「それじゃあ、そっちの方は?」


 ジェドが初老の老人に目を向ける。


「儂はロッド=エウケメス。年齢は49歳。『破魔』に所属しておる」


 初老の老人には相変わらずジェドとシアに対してそれほど良い印象を持っていないのだろう睨みつけるように見ている。


「ああ、2人ともロッドは別に君達の事を嫌ってなんかないからね」


 ヴェインがジェドとシアにそう言葉をかける。


「え?」


 『顔に出てたか?』と思いジェドとシアは緊張する。


「ははは、ロッドの目つきを見たら誤解するからさ。別に君達の顔に出てたわけじゃ無いよ」

「ヴェイン、あんまりそういう事を言うな」


 ロッドがヴェインの言葉に困ったような顔を浮かべて抗議する。どうやら無愛想に見えるだけで気の良い人物らしい。


「わかりました。『破魔』は3人だけのチームなんですか?」


 ジェドが尋ねるとヴェインはそれを否定する。


「いや、あと2人いるよ。魔法剣士のフォーラとレンジャーのコルマっていうんだけど、現在は別行動をとっている」

「別行動?」

「ああ、エリメアに先に行って、そこで冒険者チームを雇い入れている」

「なぜそんな事を?」


 ヴェインの言葉にジェドは疑問を呈する。わざわざ別行動をとる理由はないだろう。それどころか戦力分散とみなされ悪魔に攻撃されるかも知れない。


「今回の神殿に行くメンバーの選出のためだよ。悪魔との戦闘経験のある冒険者チームを選抜するのにはある程度時間がかかるからね」

「つまり我々がエリメアについたらすぐに行動できるように…という事ですね」

「そういうこと…」


 ヴェインの言葉にジェドとシアは一応納得する。効率化という観点で言えば良い手だと思う。だが安全面という事を考慮すれば迂闊ではないかと思う。『破魔』というチームは実力は確かなのだろうが、慢心があるのではないかとジェドは心配になった。


「それじゃあ、とりあえず自己紹介も終わったという事で、出発しましょう」


 オリヴィアの言葉に全員が出発の準備に入る。


「二人はどうします。馬車に乗りますか?」


 オリヴィアの言葉にジェドとシアは首を横に振る。


「これから魔物達が襲ってくる可能性がありますから、すぐに対応できるように俺達は歩いておきます。ただ荷物は預けさせてください」


 ジェドの言葉にオリヴィアは頷き、テティスに声をかけ荷物を荷馬車に積む。といっても預けたのは簡易テントだけだ。


「それでは出発しましょう」


 オリヴィアの言葉が掛けられると一行はエリメアに向けて出発することになった。

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