第68話 護衛任務追加⑥

 『悪魔を滅ぼす』という言葉にジェドとシアは絶句する。その理由はただ一つ「オリヴィア」には出来そうも無かったからだ。


 オリヴィアは格好こそ、冒険者を装っているがおそらく剣を振るった事はないだろう。長剣を持ってはいるが見せかけのはずだ。


 チラリとシアを見るが、シアは静かに首を横に振る。ならば魔術師の素養があるのかとシアに尋ねるような視線を送るが、結果は「否」だった。


 要するにオリヴィアは一般的な貴族の御令嬢であり、悪魔討伐に向いていないのだ。これは別にオリヴィアをバカにしているわけではなく。適材適所という観点から結論である。


 反対にジェドとシアにオリヴィアのような一般的な貴族の振る舞いが出来るかと言えば「否」と答えるだろう。生きるのに必要な能力が異なっている事は悪い事でも何でもない、そこに優劣は無いのだ。


「失礼ですが、あなたには荒事に向いているとは思えませんが…」


 ジェドの言葉にオリヴィアは別段気を悪くした様子はない。あっさりと首肯したところを見ると本人もその事は自覚しているらしい。


「あなたのような貴族様は俺達のような冒険者を雇って事に当たらせる事こそが役割と思うのですが?」


 ジェドの言葉にオリヴィアを見下す感情は一切無い。ただ事実を指摘しているだけだ。


「確かにその通りです。私も今回の悪魔以外であれば当然そうしたはずです」


 オリヴィアの言葉からジェドとシアは、今回の悪魔との関わりが気になるところだった。

どうやら何かしらの因縁があるらしい。それがオリヴィア本人なのか一族なのかはわからないのだが…。


「なるほど…逆に言えばその悪魔をあなたが滅ぼさないといけない理由があり、その手段もあると言うわけですね」


 ジェドの言葉にオリヴィアは頷く。


「はい、その悪魔は私の一族に呪いをかけています」


 オリヴィアの言葉にジェドとシアは反応する。


「「呪い…」」

「はい、5代前のレンドール伯がその悪魔から受けた呪いで子孫に伝わるという呪いです」「なるほど…」


 オリヴィアの言葉にジェドとシアは頷く。


 実際にどのような呪いなのかは聞かないが、その呪いを解くためにオリヴィア嬢はやって来たと言う事らしい。


「そして…その悪魔をほろ…」

「待った」


 オリヴィアが悪魔の滅ぼし方をジェドとシアに話そうとしたところで、ジェドがそれを止める。

 まだ依頼を受けたわけでもないのにそれを伝えるのはまずいと思ったのだ。


「なんです?」

「俺達はまだ、依頼を受けると確定したわけじゃ無い。完全に部外者だ。その俺達にそこまでの情報を晒すのは不用心だと思う」


 ジェドの言葉にオリヴィアは微笑む。


「確かにそうでしょうけど…話しても問題ないから話すんですよ」

「なるほど、そんなに難しい事じゃ無いというわけですか?」

「はい、特殊な道具を使いますが難しい事じゃないんです」

「その特殊な道具はあなたしか使えないというわけですか…」

「はい、家族の中で適性があったのは私だけです。お父様、お母様、お兄様も妹もありませんでした」


 オリヴィアがそう言ったところでチラリとシアを見る。


「シア様…は魔術師ですから私に魔力が無い事はご存じでしょう?」


 突然、声を掛けられたシアは戸惑う。


「…はい、正直な所…」


 シアは言いにくそうに口を開く。


「大丈夫です。今はその特殊な道具に私の魔力を込めていますので魔力が感じられないだけです」

「…だから、剣士のふりをしているというわけですか…」


 オリヴィアの言葉にシアは納得したようだ。もし、魔術師に扮した場合に魔力を一切発することの出来ない現状では逆に疑われてしまうと思っての選択だと言う事がわかったのだ。


「ええ、それでどうでしょうか。あなた方を雇いたいのですが…」


 オリヴィアの切り出しにジェドとシアは戸惑う。


「それじゃあ…俺達の依頼主に神殿の話をして問題ないですか?」


 ジェドの言葉にオリヴィアは頷く。


「事が終わってからなら問題ありません」


 オリヴィアの言葉に金髪の美丈夫が反対する。


「お嬢、それは止めておいた方がいいぞ。レンドール家が呪われているという事になれば色々と不都合が生じるんじゃないか?」

「ヴェインの言葉は一理あるけど、むしろ広めて欲しいと思ってるわ」

「え?」


 オリヴィアの言葉に全員が困惑する。


「呪いが解かれたという所が伝われば問題ないと思うわ…それに…」

「それに?」

「何でもないわ。それよりも二人はどうです?」


 オリヴィアは何かを言いかけたが話を打ち切り、ジェドとシアに話を振る。


「う~ん…結局の所、俺達はあなたの護衛で神殿まで行き、場合によっては悪魔討伐に参加しろというわけですか?」

「簡単に言ったらそうなりますね」

「シア…」


 ジェドがシアを見るとシアは大きく頷く。事情も聞いたし、なによりもオリヴィアという貴族令嬢に興味が出てきたのは事実だ。ヴェインという美丈夫に対する口調の気軽さは好感が持てたのも一つの理由だ。


「わかりました。俺達2人はあなた方の同行させてもらう。報酬は俺とシア1日で銀貨2枚、悪魔討伐完了で白金貨1枚でどうです?」


 ジェドの言葉に今度はレンドール側が戸惑う。ジェドの提示した条件は破格すぎるのだ。中位悪魔討伐の報酬が白金貨3枚であることを考えれば安すぎるのだ。


 だがジェドとシアにしてみれば神殿に立ち入る大義名分を得ることが出来、しかも報酬まで出るのだから十分だという感覚だったのだ。


「し…しかし、悪魔討伐にそんな破格な…」

「いえ、大丈夫です。以前、中位悪魔を斃しましたが、どう考えてもそれぐらいで十分です」

「安すぎるから信用できないかも知れませんけど、今回は私達がメインで悪魔を討伐するという役割で無い以上、それぐらいが妥当だと思っています」


 ジェドとシアの言葉にオリヴィアも頷く。一応納得したのだろう。


「それではあなた方をその条件で雇わせてもらいます」


 オリヴィアの言葉により契約は成立した。ジェドとシアに護衛任務が追加されたのであった。

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