第64話 護衛任務追加②

 隊商を襲ったオーガは手近な冒険者達に襲いかかる。


 オーガの巨体から繰り出される拳を前衛の冒険者が盾で受ける。


 ゴガァ!!!


 凄まじい打撃音が発せられ、オーガの拳を受け止めようとした冒険者は三メートルほどの距離を飛び地面を転がる。凄まじい膂力を受け止めるにはその冒険者の力では不可能だったのだ。


「なんでわざわざ真っ正面から受けるかな」


 ジェドは駆けながらぼそりと呟く。


 他のオーガ達もそれぞれ冒険者達に襲いかかり周囲で冒険者とオーガの頃試合が始まっている。


 見たところ、冒険者達の方が数は遥かに勝るのだが、あっという間に劣勢に立たされている。オーガを斃した冒険者チームは2つだ。どうやら隊商は質よりも数を重視したという方向なのかも知れない。


「ジェド…あそこの冒険者チームをまず助けるわ」


 シアが指摘した冒険者チームは『ブロンズ』の実力という所だ。とてもオーガに対抗できないだろう。


「わかった。シアは援護をしてくれ!!」

「うん」


 ジェドの言葉にシアは快諾すると走りながら【魔矢マジックアロー】を放つ。シアの魔術の腕前はさらに上がり走りながら魔術を放てるぐらいにまでなっているのだ。通常魔術の展開には高い集中力が要求される。そのため走りながら魔術を放てる者は間違いなく一流の魔術師に分類されるのだ。


 放たれたシアの魔矢マジックアローは冒険者を薙ぎ払おうとして振りかぶった拳に直撃する。


 拳は細かい骨が複雑に絡み合って構成されている、複雑という事は言い換えれば脆いという事だ。そこにシアの魔矢マジックアローが直撃したのだ。当然、オーガの拳は砕け散る。


 突然、別方向から放たれた魔矢マジックアローに、オーガだけでなく助けられた冒険者達もジェドとシアを凝視する。まさか援軍が来るとは思ってはいなかったのだろう。ジェドとシアを見る目に明らかな喜色が浮かぶ。


(こっち見てる暇があるんなら、さっさとオーガに攻撃しろよ)


 ジェドはこちらを見ている冒険者達に対し毒づく。実際、こんなあからさまに生じた隙を見逃すなどあり得ない。ジェドもシアもため息をつきたいのを何とか堪えながらオーガ達との間合いを詰める。


「ジェド!!頼むわ」

「ああ」


 間合いに入ったジェドは拳を吹き飛ばされたオーガの腹を容赦なく斬り裂く。


『ギャァァァァァァァァァ!!!』


 腹を割かれたオーガはこぼれ落ちた臓物をかき抱くように蹲る。ジェドは一切の容赦なく蹲ったオーガに剣を振り下ろし命を絶つ。命を絶たれたオーガの首は地面に転がり血で地面を濡らす。


 ジェドは斃したオーガに目もくれずに、次のオーガに斬りかかる。


 突如乱入したジェドとシアに冒険者達もオーガも目を丸くする。その隙をジェドは逃すような事はせず、自失から立ち直っていないオーガに斬撃を見舞う。


 ジェドの剣はオーガの右腕を切り落とすと返す刀で腹を斬り裂く。斬り裂かれた腹にシアが放った魔矢マジックアローがオーガの柔らかい内臓を貫くとそのままオーガは絶命する。


 仲間が2体殺された事でやっとジェドとシアを敵と認識したのかオーガ達はジェドに向かって襲いかかる。


 オーガの巨体から放たれる拳は凄まじい膂力と速度であったが、ジェドはそれを難なく躱す。そして躱し様に斬撃を見舞い確実にダメージを与えていくのだ。


 斬撃によって弱らせられた所にシアの魔矢マジックアローが放たれ命を奪われるかジェドの剣によって喉を斬り裂かれるか。絶命するという結末自体は変わらないが、その行程が違う。どちらがより苦痛が少ないかは命を奪われたオーガしか知り得ない情報だ。


 ジェドとシアの参戦により完全に戦いの流れを掴んだ隊商はオーガ達を斬り伏せていく。


 程なくしてオーガ達は全滅する。転がったオーガの死体は計13体、そのうち7体がジェドとシアが斃している。


 ジェドとシアは長居は無用と声を掛けてくる冒険者達に愛想笑いで返すとオーガの耳を切り取り袋の中に入れていく。ジェドとシアはこの隊商に雇われているわけでもなく、危機を救ったといっても勝手にやったことである。そこに報酬が発生する事は厳密に言えばないのだ。


 そのため、オーガの耳を討伐証拠として持っていくことでただ働きという状況を回避しようとしたのだ。


「お二人の御助勢、誠にありがとうございました」


 オーガの耳を回収したジェドとシアに一人の落ち着いた女性が声を掛けてきた。

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