『神殿調査』
第62話 出発
アレン達から新たな依頼を受けたジェドとシアはさっそく旅の準備に入った。何と言っても悪魔討伐で得た白金貨3枚は非常においしい。
使い魔だと思って討伐した悪魔がまさか本命の悪魔だったと知ったときにはかなり脱力したのだが、白金貨3枚という対金を得た時にはやはり嬉しかったのである。
その白金貨3枚を得たジェドとシアであったが、基本貧乏性の二人は無駄遣いする事もせずに、もしもの時のために大事に持っておくことにしているのだ。
「今回の旅もかなり長いものになるけど、まったく不安はないな」
「そうね」
懐が温かくなると大抵の事は何とかなるという余裕が生まれるのは仕方が無いだろう。それを気の緩みと非難するのは酷というものだ。
「そうそう、シア」
「何?」
ジェドの問いにシアは首を傾げる。
「購入したい物があるんだが」
「良いわよ」
ジェドの言葉にシアは即答する。今回の報酬の白金貨3枚は、ジェドとシアが1枚ずつとり残りの一枚は色々な費用に充てることになっていたのだ。ジェドの言葉でジェドが購入したいのは自分達の旅に必要なものであることを察したためにシアは即答したのだ。
「何を買うか聞かないのか?」
「うん、ジェドの事だから役立つものである事は間違いないでしょう」
「そこまで信頼してくれるのは嬉しいんだけど結構な額なんだよ」
「へ~ジェドがそこまで言うのなら俄然興味あるわね」
シアは微笑みながら言う。
「実は今回じゃないんだけど…荷馬車が欲しいんだ」
「荷馬車…?」
「ああ、それがあれば、旅がしやすくなるだろ」
「……ありね」
「だろ?」
ジェドの言う通り、荷馬車があれば旅が楽になるのは間違いない。今の旅は必要最低限の物しか所持していないのだ。もし、荷馬車があれば旅に必要な道具をもっと持っていくことが出来る。
「ねぇ…私の術でその荷馬車を引くことが出来るようになれば…」
「ああ、維持費が一気に下がる」
シアの術により馬の代わりになる彫刻を作り引かせれば、馬を飼うよりも遥かに低価格で旅に出れるのだ。
「という事は、シアには早いところ術を完成させてもらいたいな」
「うん」
ジェドの言葉にシアは嬉しそうに頷く。金を掛けずに自分達の旅や生活を充実させることを考えるのはシアは嫌ではなかったのだ。もちろんジェドもである。
「これから、旅の間に完成させてみせるわ」
シアは「ふん!!ふん!!」と鼻息を荒くしている。その光景にジェドは微笑む。
(本当にシアはカワイイな…)
最近のシアは益々、女らしくなってきており、ふとした仕草などにジェドが胸をときめかす事も少なくなかった。まぁ、反対にシアはシアでジェドの振る舞いに男らしさを感じることも多々あるようになり、こちらの方も胸をときめかすと言う事が増えてきていた。
「じゃあさ、とりあえず荷馬車だけでも予約しておかないか?」
「そうね」
ジェドとシアは頷くと王都の職人街に向かい、2週間ほどで取りに来ることを伝えると金貨8枚で引き受けてくれた。
その後、冒険者ギルドに行き、アレンからの依頼を受けたことを伝えると、旅の準備を終わらせ翌日にエリメアに向けて出発したのであった。
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