未来
遠い未来には、僕たちの痕跡は全く残っていない。電子機器のデータはもちろん、紙に書いたものも、紙そのものが腐って消えてしまって、僕たちが何をしていたのかなど消えてしまっている。だが、ご先祖様が遠い昔に石に刻んだものは、きちんと残っていて、何をしていたかを調べることができる。こんな皮肉たっぷりのジョークを何かの本で読んで以来、僕の頭にこびりついて離れなかった。
「まったく、おかしな話だよ。だからね、僕はこの時代にやってることが全部無意味に思えるんだ」
僕が振り返ると、彼は「ふうん」と、聞いているのかどうかよく分からない返事をした。
「聞いてるのかよ」
「ああ、聞いてるさ。だけど、お前がそう言ったって、今日の追試は消えやしないぞ」
「……現実逃避くらいはさせてくれよ」
肩を落として前を向いても、僕のノートは真っ白のままだった。
この世界のどこか、日常の片隅で(短編集) みら @mira_mamy
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