14日目 金さんがゆく 弐

【登場人物】調律の巫女一行、金太郎、浦島太郎、乙姫


※シンボル収集イベント「御伽草子バトルロイヤル」より。ネタバレ少々?



「じゃあ調律を始めるわよ」


 自暴自棄に暴れまわっていたカオス金太郎も落ち着きを取り戻し、穢れたシンボルは女神キュベリエの手の中に納められていた。


「これでやっと終わるな」

「そうですね、タオ兄。なかなか桃太郎さんの役が務まっていましたよ」


 レイナが調律の準備に差し掛かるその脇で、タオとシェインが穏やかに話している。その様子を見て金太郎は何か引っ掛かりを感じた。


「ちょ、ちょっと待てー!」

「どうしたんだい? 金さんや」


 咄嗟に叫んだらしい金太郎は、言葉を探すように少し黙りタオとシェインを交互に見つめた。


「あ……いや、なんでもねぇ……いや、あるぞ。特にそのちびすけ、前に……? あー! なンとは上手く言えねぇ!」

「……!」


 こことは違う御伽草子の想区では金太郎はシェインに気があったことを、シェイン始めここにいる浦島太郎、乙姫以外思い出した。


「き、金太郎さん。きっと何か勘違いですよ。シェインと金太郎さんはついさっき知り合ったばかりですよ」


 複雑な気持ちを思い出したシェインは焦ったように金太郎の思考を止めようとした。しかし、金太郎はじぃっと何かを思案するようにシェインと、タオから視線を外さない。


「そこのデカいドサンピンも何か気に食わねぇ」

「ぁあ!? 急に何だよやんのか?」

「ちょっと……タオも何乗ってるの」


 金太郎の言葉にタオが声を上げ、エクスはそれをたしなめた。


「ほぅほぅ。例え今の金さんじゃなくても、もしかしたらそこのお嬢さんとは何か縁があったのかねぇ」


 何かを察した流石仙人浦島太郎はにやにやと笑みを浮かべている。


「ohー! なるほど、金太郎様はそこのぷりてぃーながーるが気になるのですね!」

「な!」


 浦島太郎の横でまさに余計な一言を乙姫が言い放つ。その瞬間、金太郎の顔が真っ赤に茹で上がった。


「ば、ばっきゃろー! んなわけあるか! こんなチンチクリン…ぐっ」

「ち、チンチクリンとは失礼です! あっ! いえ……」


 誤魔化すように金太郎がいい、それに言い返すシェインだが、視線が合うと二人とも口をつぐむ。中学生か。


「でも、なうタオ様は桃太郎様で、シェイン様は鬼姫様だから二人はふーふなのです。ふーふの仲はガッチリほーるどですから金太郎様の入る余地はなっしんぐ! 私たちのように!」

「……こらこら乙姫様。物事をややこしくさせる発言はやめた方がよいですよ。さりげなく火に油のノロけもやめてください」


 しかし、時既に遅し。


「……ふーふ……」


 ぽつりと呟いたシェインは、次の瞬間ぽっと頬を染めた。それを金太郎は見逃さなかった。


「ってめー! 代用品が! てめーじゃ桃太郎は務まんねぇからはやくやめちまえ!」

「な、なんだと! んなことは俺がよく分かってるがお前に言われたくねーよ! さっきまでうだうだ言ってたガキのくせに!」

「ガキっつったなぁ! よーっし! 勝負だドサンピン!」


 金太郎、タオから殺気が迸る。その間に挟まれたシェインはおろおろと二人をなだめようとするが治まらない。


「え!? ちょっと! またカオステラーの力が出てるんだけど!」

「金太郎がカオスになったのは母親のことで、それは解決したんじゃないの?まさか違う理由で新しく力が沸き出るとかあるわけ?」


 ファムが呆気にとられた様子で金太郎たちを見た。レイナは焦り、シンボルをもつキュベリエはまさかの事態に困惑しつつも、しかし、シンボルは絶対に金太郎に戻さないように握りしめていた。


「よーっし……ぜってー勝ってシェインを嫁にもらう!」

「大事な妹をガキの嫁に出せるか! つか、何さらっと大胆発言してんだ……」


 そこにいた一同も確かに!と手を打った。


「…………と、とりあえず勝負だ! はっけよーい……の……!」

「鬼ヶ島流!」


 全身真っ赤になりながらも殺気を殺さず一歩踏み出そうとしたその金太郎に、見事なボディーブローが入った。


「姉御! 今です!」


 いつもは遠くから援護するシェインが見事な拳を披露した。クリーンヒットした金太郎は膝を着き、意識を失う。調律するなら今でしょ!

 

 長くなったのでとりあえずここで終わる。

 かくして、無事調律されたのでした。チャンチャン♪


補足

「…………シェインの大事なこと、勝負で勝手に決めないでください」





 



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