12日目 金さんがゆく
【登場人物】金太郎、シェイン、タオ
※想区『御伽草子』のネタバレを少し含みます。大したネタバレではないです。
むかしむかし…
今は昔?
否、今は今
日の本一の快男児こと金太郎は悩んでいた。その悩みはもはや根本から悩むに値しない、つまり、どうにもならないものなのだが、それでも快男児に相応しくないほどに金太郎は悩んでいるのだ。
「だからって、俺に訴えかけまくってんじゃねー!!」
今期うじ男(ウジウジしている男)代表、タオは現実であって現地でない空白の狭間で目の前に現れた金太郎に怒鳴りつけた。
導きの栞になった金太郎は、かつての【御伽草子の想区】の金太郎ではない、はずなのだが、何度もタオの目の前に現れる金太郎はそのかつての金太郎で、つまり、
「俺だってどうしていいかわかんねーんだよ!チクショーめ!あーメンドクセー」
「めんどくせーのはテメーだろ」
「………」
「………」
「…ドサンピンのテメーに頼むのは性に合わんが…」
「じゃあ他を当たれよ」
「…………」
「…………」
「…いや、すまん。一度だけ、本当に一度だけ頼む!」
「………」
タオはその熱意に押され、首を縦に振った。
この金太郎はつまり、特定の誰かに会いたい金太郎だった。
────
「?タオ兄、ハインリヒ大好きさんが金太郎さんにコネクトするなんて珍しいですね」
「!…そうなのか!?…いや、じゃなくて、あの…」
コネクトの光が解けて目を開けば目の前にシェインがいた。見た目は金太郎、中身はタオ、のはずだが、今は特例で中身も金太郎である金太郎は(ややこしいな)、普通に隣にいるシェインにたじろぐ。
あの時は同じ時系列にいたが、もはや二度と交わることのない別世界の人間同士。またこうして会えるなんて、という感動と、会えたところで栞である己の身では所詮何もできないという落胆がない交ぜになりながら、金太郎は落ち着けと自らに言うように深く息を吐いた。
「タオ兄?」
様子のおかしい金太郎にシェインが不安そうに顔を覗き込む。これが義兄妹の距離なのか!せっかく落ち着かせようとしたのに金太郎は後退るしか逃げ方を見いだせない。
「ば、バカヤロー!ち、ちけーんだよ!ド阿呆が!」
「え!金太郎…さん?ですか??」
独特の言い回しにシェインもハッとする。
「あ…そのなんだ…あの野郎…タオにちょっと頼んで、だな…」
「……はぁ」
御伽草子の想区にて、まさか自分が人から好意を寄せられるとは思ってもみなかったシェインは、その好意を寄せてきた相手が再び目の前に現れたことに動揺した。正確には、タオがそれを許したことと、そうまでして自分の前に現れた金太郎の想いに、表情にこそ出ないが内心、心臓はバクバクである。
「で、で!金太郎さんは何をしに?」
「!な、何って…」
実はあまり深く考えてなかった金太郎。
「…もう一度顔みたくなってよ…」
「…………」
どストレートな物言いに顔が熱くなるのを感じる。もちろんお互いに。
「……こぱっずかしーことしてんなバカ野郎!」
「!タオ兄!」
「ちょっテメー出てくんな!」
しびれを切らした内のタオが叫んだ。端から見ると金太郎が一人二役している。
「俺の身体だ!見てらんねぇからコネクト解くぞ!」
「待て!つか、見てんじゃねーよ!ド阿呆が!」
「だから俺の身体だっつてんだろ!紙切れに戻れ!」
「馬鹿にしやがって!テメーみてーのにシェインは任せらんねぇよ!」
「何!?勝負するか!?」
「あぁん!?挑むところだ!」
「…………」
一人二役太郎が言い合っているその周りの空気がどんどん冷えていく。
「…秘技…鬼ヶ島流…」
「「……シェイン?」」
その空気に気づいた二人は、もう、遅い。
「
一人二役だから文字通り一蹴で事足りるね!
色々な意味の雰囲気を掻き乱されたシェインはぶつけようのないはずだった想いをとりあえずぶつけることができたので、清々しい顔で星になった二人を見送った。
めでたしめでたし!
※とりとめもなく終わる。
※中の人は金太郎の恋を応援しています!
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