誘ってみた
バスを乗りついで動物園を目指す。
この日は梅雨の中休み。10時を過ぎると気温がかなり上昇し、またじめじめした湿度の多い生ぬるい風が時おり吹いている。
町行く観光客は片手にペットボトルの飲み物を飲んだり、京都らしい抹茶のソフトクリームを食べ歩きしたりしている。
「暑いなー。大丈夫?」
「大丈夫。わたし楽しい!」
「あー楽しいな。アイスクリーム食べる?」
「わたし抹茶好きじゃない。」
「知ってる。抹茶じゃないのもあるよ。」「わたし朝食べた。まだ大丈夫!」
「OK!」
途中でバスを乗りかえる時、500円の一日乗り放題券を発見したので購入した。
相変わらず人は多いが、修学旅行で動物園に行く学生はおらず、
「ラッキー!」
と思ったのもつかの間、園内は幼稚園児が大勢いた。
そんな幼稚園児をみながら二人で
「かわいいな。」
「うん。わたしこども好き。かわいい。」
そう話す燕もかわいい。
京都動物園は最近園内改装されたようで、
キリンを上から見られるようになっていたり、猿やゴリラも自然に近い森のようになっていたり、像が間近で見られたりした。
中でも虎がすごくちかい距離で見られて、なかなかの迫力だった。
前に来た時よりも大分楽しめる環境になっていたと思う。
そして彼女も終始色々な動物を見て楽しそうにしていたので僕はかなり満足していた。
とはいえ、この蒸し暑さ。
なかなかの体力消耗だ。
彼女は若いせいかまだまだ元気そうだが、こちらがくたびれてきたので、
「燕、どこかお店入ろう。」
「わたしまだおなか空いてない。」
「いやいや、私が少し疲れた。ちょっとなんか飲みにいこうか?」
「OK!」
少し歩いた所にスターバックスがあったので、そこでキャラメルフラッペチーノと、マンゴーのフラッペチーノを頼んでしばしティータイムを楽しむ事にした。
「燕は次にどこに行きたい?」
「んー何処でもOK!」
「どうしようかな?近くなら南禅寺か琵琶湖疏水か?もしくは清水寺か?」
ニコニコしながら楽しそうにこちらを見ながらマンゴーフラッペチーノをすすっている彼女。
「美味しい?」
「あーわたしこれ好き。あなた少し飲む?」「ありがとう。燕も私の飲むか?」
「あー。」
お互いの飲み物を飲み比べる。
小さな口で僕のフラッペチーノを飲む彼女を見ていたら、たまらなく彼女の唇に触れたくなった。
けれども当然、欧米人のように公衆の面前でキスするほどの度胸はない。
それで小声で
「燕、私はあなたとホテル行きたい。」
と断られる前提でそれとなく誘ってみた。
「ムリ!」
と言われて、
「だよね!」
と笑って返す。
つもりだったのに…。
「今ある?」
え?
「あーあるある、すぐに探す。」
「ちかくある?」
「大丈夫あるわ。行く?」
「OK!」
あれ?あれあれ?
「え?本当に大丈夫?意味わかってる?」
と冷静になって真意を確認してみる。
「なに?あなた一緒にだいじょうぶ。」
予想もしない転回にこちらの方がどぎまぎしながら、店を出てホテルの近くまでバスで向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます