sunset 

彼女を連れて車を走らす。

突然のドライブに行く事になったのでノープランだったが、とりあえず景色の良いところを走る。

この町はとにかく湖しかない。

小高い丘の上から見下ろす場所を思い浮かべ湖沿いを走る。

橋を渡り湖の西側にでる。

平日なので道は空いてる。普段渋滞で2時間かかる道だが、一時間半くらいで目的地の周辺についた。

ドライブ中も日本語で会話する。

信号でとまればどちらともなく手をつなぐ。


目的地の公園は山の上だが半分以上は車で登れる。

桜のシーズンはお弁当を持った家族が沢山集まり、GWになればBBQをする人たちが集まるが、平日の夕暮れ時の公園はあまり人気もなく駐車場の入り口にはチェーンがかかっていた。

入口に車を停めて小高い丘を二人で登った。

「私、運動好きじゃない。」

「もう少し頑張って。」

「だいじょうぶ。」

かなり急な階段を登りきると、視野の開けた広場にでる。

そこからは湖の広範囲が見渡せるのだ。

「はぁー!」

「すごくきれいでしょ。」


彼女はいつものようにスマホで写真をとりはじめた。

はしゃぐ彼女を僕もスマホにおさめる。

誰もいない公園。

日が沈みかけた夕暮れ時。

静かな風の音と

夕焼けの匂いが心地よく感じた。


もう少し上の方まで二人であがって

木々で少し薄暗い林道に、ちょっとしたアスレチックがある。

不安定な木の遊具を手をつなぎながらキャーキャー言いながらはしゃぎあう。

林道を抜けるとちょっとしたログハウスのような施設があり、眼下にはまた違う角度の町並みが見渡せた。

景色を見下ろして少したそがれてみる。

夕暮れ時とはいえ、だいぶ日が伸びた。

ゆっくり沈む太陽が今日という日を惜しむように次の目的地へむかって行く。

十分に1日の終わりかけを楽しんだあと、

現実世界へと階段おりる。

階段で身長差が縮まったところで、いつもとは違う視線で彼女と向き合う。

視線の違いを楽しみながら、

彼女を抱きよせた。

いつも頭ひとつ分小さい彼女が、今は頭ひとつ分目線が上にある。

そして小説やドラマのような情景を背に

誰もいない公園で二人きり。

そこには言葉なんていらない。

彼女のきれいな瞳をみながら唇にふれて、

黙ってロマンチックな長いキスをした。


最初から期限つきの恋だとわかっていたはずなのに、もう動き出した鼓動が止まらなかった。彼女をずっと自分の元においておく方法はないのだろうか?

彼女はどう思っているのだろうか?

楽しい時間はこんなにも早く過ぎて、

こんなにも心地よく

そしてこんなにも悲しいものなのだろうか?

距離が縮まる程に

寂しさが募るばかりだ…。

そして今日という日が西の空に消えていった。






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