焼肉
ーういしんー
「おはよう。あなた今日は休み?」
「おはよう。やすみ。」
「家に行って良い?」
「きょうは紅(フォン)もやすみ。無理。」
紅はルームメイトの名前。
「そっか。わかった。またにする。」
しばらく間があって、
「わたしやきにくたべたい!」
「行こうか、焼肉。」
「でもお店遠い…。」
彼女が行きたいお店は確かに遠い。自転車で、一時間弱。国道沿いで電車の駅も近くになく、バスもいまいちわからない。
「レンタカー借りようか?」
「たかい?」
「大丈夫、安いところ知ってる。」
「お願いします。」
「OK」
「紅も一緒にOK?」
来るんかい!
「いいよ。」
「ありがとう。あなた10時私の家にきます。だいじょうぶ?」
「わかった。10時ね。」
それから急いでニコニコレンタカーにメールで予約。12時間2,525円の破格だ!
…が、現在空き無し。の表示が…。
当日借りられる程あまくはない。
仕方がないので、駅前のレンタカーに電話。相場通りくらいの値段で借りれた。
安い焼肉食べ放題に、レンタカーを借りて行く事に、少し笑えてくる。
当然焼肉代もだすつもりだ。
トヨタの白いbitsを借りて久々に運転する。
まぁ感覚は鈍っていないようだ。
約束まで少し時間があったので、少し遠回りをして、運転感覚をしっかり取り戻して彼女の家に向かった。
「おはよう。」
「おはよう!」
出迎えたのは紅の方だ。
「わたしもやきにくたくさん食べます!」
「OK、OK!燕(やぇん)←(燕ちゃんの事です。)はどこ?」
「います。」
奥を指差す。
部屋の奥に入ると彼女がお化粧をしている。
「おはよう。」
「おはよう、くるま大丈夫?」
「ん?運転?大丈夫だよ。」
「お店なんじから?」
「しらない。調べるわ。」
まさかの11時30分から。
店まで車なら20分くらいだ。
まだまだ時間がある。
仕方がないのであと一時間は部屋で過ごす。
二人そろうと、当然言語は中国語に戻る。
日本にいながら完全にアウェイな感じだ。
なんとなく手持ちぶさたで、スマホをいじり倒して時間をつぶす。
ようやく出発時間になったので、
「そろそろ行こうか?」
「はい。」
と言ったところで彼女のスマホがなりだす。
「欢(ファン)から。」
仲の良い同期の研修生からだ。
どうやら欢も休みのようだ。
しばらく話したのち、
「欢もやきにく行きたい。大丈夫?」
「あーいいよ。」
もーすでにデートじゃないしどうでもいいや!という気分になる。
とはいえ、当然のように助手席にまわる燕ちゃん。
…間違えて運転席に向かう。
「運転する(笑)?」
「中国反対まちがえた!」
中国は基本左ハンドルのようだ。
途中で欢をひろって焼肉屋さんにむかう。
平日大人1000円で、焼肉、寿司、に野菜に飲み物、デザートまで全て一時間半食べ放題はかなりの安さだ。逆に何使ってるか恐いと思うのは日本人の感覚だろうか?
まぁ今日の焼肉は当然僕のおごりだ。
しかし彼女達の食べっぷりには感服する。
「中国の人みんな食べるの大好き。」
「みんな沢山食べます。」
「わかった。わかった。ところで今日の事は他の研修生には話したら駄目だよ!」
「ゆっくりはなして、少しわからない。」
口にチャックのジェスチャーで、二人とも納得。
研修生はみんな日本語を同じ時間勉強しているが、みんな必要最低限の日本語しか話さないし、理解していない。仕事中でも普通に中国語で話しかけてくるし、中国語で反発してくる。そんな時はお手上げだ…。
燕ちゃんは特種だ。一生懸命日本語を勉強して、みんなに日本語で話しかける。
だから結構職場の日本にも男女問わず人気が高いしかわいがられる。
他の研修生の名前は知らなくても、みんな燕ちゃんだけは、「燕」と名前を呼ぶ。
先日若い派遣の男の子にういしんのアドレスを聞かれていたで少し驚いた。
最後まで山盛りのアイスクリームを食べて一時間半しっかり食べきり帰路に向かう。
紅と欢
「あなたはじめていつ燕とごはん?」
「あ?忘れた。」
忘れるわけがないがまともに答えない。
「うそ!あなたしってる。」
燕ちゃん苦笑い。
「あなた燕と結婚しますか?」
「…わからない。」
まぁ正直一緒にいたい気持ちはあるけど、結婚はもういい。仮にしてくれたとしても、現状の給料と毎月の支払では幸せにできない。
そんな質問しながら燕ちゃんと紅の家に到着。紅と欢が気を使って
「あなたと燕はこれからデート。」
「私たち二人でこれから買い物!」
「あー行って来るわ。」
「ごちそうさまでした。」
再び口にチャックのジェスチャー!
笑顔で手をふる二人をおいて、
ドライブに向かった。
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