はざま
それからしばらく忙しい日々が続いた。
仕事はまもなく迎える繁忙期の為に
新しい商品の製品製造テストが
毎週のようにはいってくる。
納品先からの要求なのか、開発チームの提示してくるのはハイレベルなものばかり、
食品工場なので、品質や衛生面の検査いれも毎週のようにおこなわれた。
当然検査落ちしたものは、
製造にストップがかかる。
だから適当にというわけにはいかない。
職場の空気もピリピリする。
気も疲れてはてた夜勤の明けに立ち寄ったスーパーで、ばったり元妻に出会ってしまった。
慌てて隠れて出会わない様に一つ後ろの棚に戻り、遠目から彼女かどうかを確認してそっと店を立ち去った。
やはり同じ街に住んでいれば、こういうこともありうるのだ。燕ちゃんと手を繋いでいるところなど見られたら非常に気まずい。
しかし久しぶりに見た元妻に全く魅力を感じなかった。
ケンカしては元に戻っていた時は別に義理で戻っていたわけではない。
ちゃん彼女と向き合って彼女を受け入れられる気持ちもあった。
戻る度に僕は本当は彼女が好きだと思っていたし、少なくても思おうとしてた。
しかし離婚したからだろうか?
それとも束縛というものから開放されたからなのか、
もし彼女に戻ってきてと言われても
戻りたいとは思えない。
プライドの高い彼女が自分からそんな事を言うとは思えないが…。
ーういしんー
「おはよう」
「おはよう。あなた今日やすみか?」
「いや今仕事おわり。今あなたの家に行く、OK?」
「あなた仕事おわり。つかれて、あなたいまかえるねて。」
「つかれたから少し会いたいな!」
「だいじょうぶ?」
「大丈夫。後で寝る。」
「OK」
「もう着く」
「いま?」
ピンポーン
ういしんを送りながらすでに彼女の家に向かっていた。
「はやい!」
「はやく会いたいから早くきた。」
そう言って彼女を抱き寄せた。
「キスしたい。」
「ん?」
まぁ当然拒否されると思いながら、
そのまま顔をよせる。
あれ?
よけない?
そのまま彼女の手が
僕の腰から肩までスライドして、
上目使いで僕を見上げた。
そのまま顔を近づけて行く。
触れるかふれないかのところで少し待って
それから彼女の上唇をついばみ
下唇に少し触れてから
優しく唇を合わせて
潤った唇の感触をゆっくり味わった。
彼女は瞳はとじず
僕の口づけをうけいれてくれた。
不意討ちじゃないキスは
やわらかく
唇はみずみずしく
そして心地良かった。
彼女と目をが合って
二人で微笑みあう。
「唇やわらかい」
「いわない!」
そのまま彼女を再び抱きしめて
もう一度と顔を近づけると、
彼女ははらりと僕の手をほどいて、
何事もなかったかのように
I-PAT?(だと思う)の置いてあるテーブルの前のイスに座る。
アプリで中国のドラマを見ている最中だったようだ。
僕はだまって着いていき彼女の隣に座るが、
全編中国語のドラマが僕を眠りに誘う。
たまらなくなって、
「私、少し寝る。」
と言って彼女のベットを指さした。
「どうぞ!」
そのまま彼女の唇の感触が夢では無いことを願う。
そうか
僕が元妻に魅了を感じないのは彼女以上の人に出会ったからだ。
自分勝手な考えかも知れない。
僕が彼女や家族を裏切ったり
捨てたわけじゃない。
ずるいかも知れないが、
離婚を切り出したのは彼女の方だ。
あー…。
せっかく良い気分だったのに、自分に言い訳してるみたいで、なんか少し憂鬱になってきた。
今はきっと過去を乗り越え先に進む
「はざま」の時期なのかもしれない。
ベットに寝転ぶと一気に疲れがおそってきて
五分とたたず眠りにおちた。
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