曇り後晴れれば

ーういしんー

「インターホン壊れてる!」

「あいやー」

急いで玄関に向かうが、

待っていた感を出したくなかったので、

ゆっくりドアを開く。

「おはよ。」

「おはよう。これ鳴らないよ。」 

2~3回試したがならなかった。

「あなた直せる?」

笑顔で

「いや無理。」

その笑顔に癒される。


「さっき雷なってたしかな?」

「カミナリ?」

「そう、それから雹が降ってた。」

「ナニ?ヒョウ?」

「あーちょっと待って」

スマホで変換してる。

冰雹

「真実吗?!」

「あー本当に。」

「あなたダイジョウブ?」

「うんちょっと降っただけだし大丈夫。」

基本は当然中国語

彼と話している最中もちょいちょい中国語で話す。たまに意地悪して、ずっと中国語で話すと困った顔になる。それもまた楽しい。


それより歯痛がおさまらない。

「どうした?」

「歯がイタイ。」

「また?歯医者行きなよ。」

「イカナイ!」

「じゃあ少し休んでから行こう。」

「うん。」


ーういしんー

嫌な予感…。

やっぱり彼氏だ。

あんまり彼といる時にやりとりしたくない。

「早。今天假日工作?」

(おはよー。今日休み?)

「啊」

(まぁ)

➡ここからのやりとりは中国語は省略➡

「あなた最近あまり連絡くれない。」

「忙しい。」

「いつも忙しい」

鬱陶しい。

彼に見られるのが嫌でついスマホを見えないように角度をかえる。

「バイバイサヨナラ」

強制的に終了させる。


「彼氏でしょ?」

「んー?」

とりあえず誤魔化す。

「ごめんな見るつもりなかったんだけど、スマホ傾けた時、見えた。日本語で、シュジンて書いてあったから。」

裏目にでた。

「うん。でもダイジョウブ!」

「よくわからないんだけど、シュジンて、あなた本当に結婚していないの?」

「してない!日本語スコシムズカシイ。シュジン意味チガウ。ダイジョウブ。」

結婚は本当にしていない。

でもそれをどう伝えたらよいかわからない。

少し困った顔をしていると、

「わかった。信じる。」

「うん。」

こういうところが好きだ。

「私のトモダチ、中国で結婚してマス。でも日本にも彼氏イマス。何人も彼氏イマス。私にはムリ。そういうのスキじゃない。」

「そうなの…?でもあなたは彼氏いるし、私とも付き合ってるよね?」

「チガウ!」

「いや別にいいよ。俺も分かっていた事だし。」

「私、いま彼氏あまりスキじゃない。」

「わかった。もう聞かないよ。」

穏やかな笑顔で抱き締めてくれる。

彼は中国語ほとんどわからない。

私のつたない日本語でも彼は察してくれる。

言葉が通じくなくても、

わかってくれるって本当に温かい。

抱き締められた体も

心の中も…。

顔をあげると彼と目が合う。

二人でほほえみあったあと、

彼の唇が私の唇に近づく

一瞬目をつぶりそうになって、

あわてて引き離す。

「ダメ」

「なんで!?」

「シラナイ!」

まだ彼を受け入れる勇気がない。

一度彼のキスを受け入れてしまったら、

もう後戻りなんかできない。

「うーん…。キスしたいなー。」

無言で首を横にふる。

「OKわかった。今日はしない。」

「今日は?てっアッ!」

油断したすきに軽くキスされた。

「あなたワルい人」

「ごめんごめん。」

悪気なく笑顔で謝る。

「歯痛、治った?」

「あー今ダイジョウブ。」

何事もなかったかのように会話してくる。

私はそれがすごく心地良いのだ。

さっきまで灰色だった空から、光が射し込んできた。太陽の光が雲を割って来ている。

「おー天気良くなってきたね!そろそろ遊びに行こうか!」

「何処にいく?」

「湖、見に行く?」

「うん!」

いつも彼のペースに巻き込まれていく。

でも強制じゃない。

私の事を考えて行動する。

そして私も彼のそのペースを楽しんでいる。

先々不安で沢山雲がかかっていても、

明るく道を照らしてくれる。

そんな彼と過ごす休みは本当に楽しい。

歯痛から解放されて、

雲っていた私の気持ちにも

少し晴れ間が見えているようだ。



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