リセット

一ヶ月ぶりに休みが一緒になった。

いつもは彼女が休みの日に、夜勤の終わり

に少しだけ会いに行くだけ。

遊園地に行った時も、僕は夜勤明けで寝ないで行ったし。

日勤の時間帯に休みが一緒なのは初めてかもしれない。 


朝から暑いくらいの陽射し、

とりあえずたまっていた洗濯物をまわして、

一通り掃除機をかけながら、

ーういしんー

「おはよう!」

「おはよう」

「今日に遊びにきませんか?」

「OK。買い物行く。」

「何を買う?」

「今は知らない(^ω^)」

「OK。何時に行く?」

「10時」

「OK」


僕の場合、自分の精神状況が乱れていると、部屋が片付かない。

仕事が続いて疲れきっている時の部屋はいろんな物が散らかり放題だ。

休みの日はその状況のリセットから始める。

大雑把な性格だから、部屋の隅々まで埃ひとつなく!っとはいかないが、

とりあえずテーブルの上には物は置かない。眼鏡と透明のグラスはくもらせない。

これが僕の最低ラインのリセット条件だ。

テーブルの上の物は自分が抱えている問題の多さだと思う。

何にもないと落ち着く。

くもった眼鏡とグラスは見透しが悪く不安になる。


せっかく洗濯物を干したのに、好天かと思っていた空が急激に変化していく。

突然強い風が吹き出し、青い空と白い雲が灰色に侵食されていく。

「おいおい。嘘だろ…。」

生まれた時から雨男

そんな自分の運命をのろいながら、

ジャケットとパンツを選ぶ。

服装や髪型を悩むのは楽しい物だ。

きっとそれもデートの一部なんだろう。

40近くなって気になるお腹回りを気にしながら服を選ぶ。

水色のシャツに黒いジャケット、ベージュのデニムを合わせて少しロールアップする事にした。

ワックスで髪型を直しながら、剃りきれていない髭を抜き、長く伸びた眉毛の一部を短いハサミで整えた。


掃除や洗濯は自分の精神状態のリセットであるように、彼女と会う事は身なりや老け込んだ自分をリセットするのに必要な時間なのかもしれない。 


時間を気にしながら、ギャッツビーのお気に入りの香水を腕と首にかけて、安物だけどデザインの気に入っている腕時計をつけて、グレーのスニーカーを履いて家をでた。


一段と怪しくなった空を眺めながら、黒い傘を自転車に差し込み彼女の家へ向かった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る