一人じゃないって…。

ういしん

「私、リンゴタベタイ。アナタモッテクル。オッケー?」

唐突に均衡は破られた。

「OK!いつ持っていく?」

「アナタ休みいつ?」

「14日休み。あなたはいつ休み?」

「14」

「じゃあ14日に持って行くね。」

「オッケー!」

なんの前触れもなく…今までのはいったいなんだったのだろう?3月14日といえばホワイトデーの日だ。一応バレンタインに、餃子をご馳走になった。チョコレートも貰った。

だから3月の初めにお返しは用意していた。


こういう買い物は楽しい

相手の事を想い、

喜ぶ顔を想像して、

何が望みか考える。

キャンディ?

いやないな。

チョコレート?

それはあまり好きじゃないっていってたな?

ご飯をご馳走する?

それだけじゃなんかパッとしないな。

アクセサリ?は趣味もサイズもわからない?

結局香水を買うことにした。

BVLGARIの男物だけど

それこそ趣味がわからないが、

自分好みの香りだしまぁ良しとしよう。

あとちょっとしたお菓子

チョコレート以外。


まぁしかし、このまま返事がなければ渡すのはやめようかと悩んでいたところだ。

とにかく一歩前進?

したと思う…。


その日僕はスーパーで真っ赤なジョナゴールドを買って、彼女の家へ向かった。


ピンポーン

久しぶりに彼女の家を訪れる。

…。

返事がない?

身なりをきにする。

髪型おかしくないかな?

眼鏡きたなくないだろうか?

香水はつけてきたし、

忘れ物はないはず。

しかし今日はきれいな青空だ。

3月中旬

今年はまだ寒い。

去年の今頃は、別れた妻と復縁しようと家に戻った頃だった。未練はないけれど、ついいろいろと考えてしまう。子どもはどうしてるかな?

 事情も良くわからない歳頃。

突然父親が家に帰らなくなった彼らに対しては、罪の意識は拭えない。そんな事を考えていたら悲しくなってきた。


でないなー。

もう一度インターフォンを…、

あっ部屋間違えた。

改めて部屋番を確認して、

ピンポーン


一人になりたい。

でも一人はさみしい。

相田みつをの詩集を思い出す。


そして扉が開く

「オハヨウ」

少し眠そうな燕ちゃん

「おはよう」

中に招き入れられる。

「サムイ?」

「あー風が少し冷たいなー」

ドアがしまる。

「目にナミダある?」

「あー…。」

僕は彼女のてを引いて思わず抱き寄せた。

「ワァワァワァ、ナニ?」

慌てる彼女

「少し嫌?」

首を横にふる。

「すごく嫌?」

笑ながら

「イヤじゃない。」

「じゃあもう少しだけこのまま。いいかな?」

彼女の手が僕の腰にまわる。

「ダイジョウブ?」

「あー大丈夫。」


彼女がいなければ、

僕は立ち直れていただろうか?

喜びも悲しみも分かち合う人がいなければ、生きている実感などない。

一人はさみしい。

でも僕は一人じゃない。


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