ことばのかべ
僕は無言が耐えられない人間だ。
無言て結局共通の話題がないって事だと思う。
相手が何を思っているのかを考えてしまう。
普段思っていることは沢山あるのに
何から話して良いか分からなくなる。
しかし今回は少し違う。
何せ言葉でのコミニケーションはほぼ絶望的。
聞きたい事があっても、なんて聞いていいかわからない。
とにかくカバンにバイブルはいれた。
あと世界の共通言語英語をとりいれながら、
ジェスチャーでやりとり。
昔ヨーロッパを旅行した時はこれで乗り切った。
なんとかなるさ!
基本僕は前向き、ポジティブ。
まぁ逆手にとれば、
無鉄砲、考えなし……。
「何を飲む?」
「あー?」
「ドリンク」
そしてジェスチャー
「まぁとりあえずビール2つ!」
「かしこまりました!」
後はお酒の力を借りて
「乾杯!」グラスをあてる。
とりあえず笑顔。彼女も微笑む。
「アナタワタシの国の言葉ワカル?」
「ごめんわからない。でもこれ持ってきた。」
すかさずカバンからバイブルを取り出す。あとノートとシャープペン。
「OK!」微笑む
「あなたの国の言葉教えて!」
「わたしは日本語少しワカル。話すスコシ。聞くワカラナイ。ゆっくりハナス、スコシわかる。」
「大丈夫!なんとかなる。」
彼女はポケットからスマホを取り出して何かを打ち込みはじめた。
翻訳アプリだった。
そうかそれがあったのか。便利な世の中なったものだ。そもそも僕はまだスマホ自体使いこなしていない。
言葉の壁はなんとか越えられそうかな?とにかく自分も翻訳アプリをダウンロード……できない。
なんでだ?何度挑戦!でも結局その日は出来なかった。
「あなたはお酒たくさんのめる。」
「スコシ飲めます。」
「何が食べたい?」
「食べ物何が好き?」
「ワタシお肉すき。」
「オッケー!俺適当にたのむね。」ジェスチャーつきで話す。
無言でうなずく。
焼鳥に、唐揚げに、漬物、後は女の子だし、サラダかな?こんなもんかな。
「食べてね。」
「はい。」
「日本なれた?」
「スコシ。」
「仕事は?慣れた?大変?」
「シゴト、ダイジョウブ。ワタシ、残業スコシなんでだ?」
「今は少ない。忙しい時多い。」当たり前か。
その後も仕事の話を中心に、なんとか会話が成立していた。だんだん彼女も緊張がほぐれてきたようで、カウンター席で顔を寄せてスマホとバイブルを見ながらの会話。たいした話もしていないのにすごく楽しい。彼女の横顔を眺めていたら、少し上目遣いで僕の方を見て、微笑みながら「ナニ?」
……やっやばい。
撃ち抜かれてしまった。
めちゃくちゃ可愛い。
かわいすぎる。
「かわいすぎるわ。」
思わず声に出していた。
「ふふん(*≧∀≦*)」
彼女も微笑む。
言葉は通じなくても心は通じる
僕はその日完全に心を奪われてしまった。
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