第2話 ヨシヲと三人の魔法使い

 どこにでもいる平凡な見た目の平凡な高校生だった俺ことヨシヲ。なんやかんやで異世界で勇者をやることになった訳だが、どうやら俺は冒険する前から躓いてしまったらしい



 この世界に勇者という職業は昔は存在していた。“昔は”である。魔王がいてもわりと平和な今では名乗る者もなく無職以下の認知度であり、勇者を名乗るという事は信用が無いに等しいのだ....


 それなら新しい職業に就けばいいのではと思ったが酒場の2階にあるハロワの神殿に身分証明の提示を求められ見事に詰んだのであった。無いっスわぁ〜、この世界に戸籍も、住民票も。保険証も!ましてや住所不定!まさかの不法入国者状態....仕事ってどうやったら就けるんですかねぇ(^p^)\ツンダ/


 俺は再び先程のテーブルに座り込み悩んでいると、当たり前の様にテーブルの向かいに座っていたマントにパンイチパンツ一丁の男が遂に口を開いた


「だからさぁ、回りくどい事してないで俺達も仲間一人探してるんだからこいつ誘えば良くね?本当は女の子がいいけどなんか可愛い子あんまいないしとりあえず他の街までパーティー組めば良くない?」


 まくし立てる様に言った言葉だが無職より酷い状態で全く動けない現状よりはるかに建設的であるしであるのでこちらとしてはありがたい申し出だ。今となってはこちらの立場の方が弱いのだ


「とりあえず自己紹介しませんか?僕はヨシヲといいます。16歳です。職業は勇者無職以下です。」


 とにかくこちらから自己紹介を始める形をとった。するとそれを見た三人も改めて座り直し自己紹介に入る。


まずは一番不審なパンイチ


「俺は山◯宏一、30歳。職業は魔法使いだ」


 ....どこからツッコんだらいいんだコレ?

まずなんで名前がよりにもよって山ちゃんなんだよ!?どんな偶然なの?しかもあんた全然男前な声イケボじゃないよね?明らかに南海キャンデ◯ーズの眼鏡の方の山ちゃんだろ?


 いろいろなツッコミを押し殺しながら一礼して瓶底眼鏡の人に視線を向ける


「僕は山田耕筰といいます。30歳、魔法使いです。」


 この人は影薄いなぁ山が被ったけど名前なんて言ったっけ?前の奴のインパクトで完全に頭に入らなかったわぁ〜。山....出?確か山出さんかな?


 まあいいやと“明らかにおかしな点”を気にせず一礼して俺はスーツのローマ人の様な男に視線を向ける


「私は田中正造だ。30歳、魔法使いだ。これからよろしくヨシヲ君。」


 嘘つけよオイィ!!?あんた絶対阿◯寛だろ?そんな彫りが深い田中正造見たことねぇよ!


 心の中でツッコミを入れながら俺はあるに気付いた。気付いてしまったのだ。

 待て。今この人達の言った職業。明らかに偏ってる?何故皆して魔法使いなんだ?この世界の習わしなのか?


「あの....どうして皆さん三人とも魔法使いなんですか?何か意味があるんですか?」


 疑問に思わざるを得ない。明らかに偏っている。回復役もいなければまともな攻撃役もいない。意味があるなら聞かない訳にはいかない....

 俺の質問に田中さんが少し笑いを含んだ顔で、それでいって深刻そうに。机に広く両肘を付き手を自身の目の前で組む様にして静かに答えた


「もともと私がパーティーで魔法使いを務めていたのだが....ある日二人が突然魔法使いになってしまって変更出来なくなってしまったんだ。」


 やはり三人魔法使いというのは普通の事ではないようだ。


 そして....なんとなく。なんとなくだが田中さんの言う事の“答え”がほんと〜になんとなくだが知っている様な気がするのだ。間違っていて欲しいが俺のいた世界にも伝承があって、それに該当する要件を田中さん以外の二人は“満たしている”気がするのだ....


 だがここまできて背に腹は代えられない。


「アノ、俺大丈夫デス。ソウイウノ気ニシテマセンカラ。」


『ヨシヲはこころをころした!』


「ヨシヲよろしくな」

「ヨシヲ君よろしくお願いします。」

「解らない事があれば何でも聞いてくれヨシヲ君。」


 ♪あのBGM〜

『ヨシヲになかまか"て"きた』



 俺達の冒険はこれからだ....

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