第25話

アイザックに訓練最終日試験をすると告げられた日から既に四日経った。

魔法の練習はアイザックを的に使ってしているのだが、未だに攻撃が当たりそうな気配は無い。

そんな調子だが俺は全く焦ってはいない。

何故なら、丁度この前考えた案が使えそうな為、それで行くつもりだからだ。

だが、その為にも俺は複合魔法を習得せねばならない。

という訳で、今日はアイザックに頼んで教えてもらう予定だ。

教えてくれなかった時はラミアにでも聞いてみよう。


「という訳で、アイザック複合魔法教えてくれ」


「いや、何が という訳 なのか分からないんだけど」


「俺も魔法を使い始めて約一ヶ月経つ。んで、初級の魔法は全部覚えたし沢山使って練習もした。そろそろ一つくらい複合魔法を教えてくれても良いんじゃないか?」


俺がそう伝えるとアイザックは腕を組んで考え始めた。


「うーん。確かに初級の魔法は合格ラインには到達してるね。複合魔法か…ナナシに複合魔法なんて使わせたら自爆しそうなんだよね」


失敬な。俺は自爆なんてしませんよ。


「大丈夫だって。なんかそんな気がするし」


「うーん…分かった。教えるよ」


「おぉ!やったぜ!」


流石アイザック!分かっているじゃないか!

ふっふっふ、その選択が後に自分を苦しめるとは思うまい。


「じゃあ、まずは複合魔法について説明するね」


「うぇーい」


毎度お馴染みのアイザックによる長い説明が始まった。

しかし複合魔法は魅力的な為、黙って大人しく話を聞く。


話を全て聞き終え、聞いた話を頭の中で整理する。

ふむふむ、複合魔法は二種類以上の属性を合わせて魔法を使うことね。

二種類を合わせて使う属性にはこんな感じの物があるそうだ。


闇光= 空 水風= 氷 火光= 雷

光土= 月 光火= 陽 土風= 木

火水= 爆 闇土= 呪 闇風= 病

火土= 溶


全部で十六種類あるそうだが戦闘に使い道があるのはその十種類だそうだ。

残りの六種類が使い道がどう無いのかと言うと、火風= 熱 という物があって効果はそのままだが、熱い風を発生させるらしい。

使い道が無いと言っても戦闘に使えないだけで、日常生活等ではドライヤー代わりに使われる事もあるらしい。

他にも水と闇= 汚 という物の効果は汚水を発生させる魔法だそうだ。

使い道が無いし、自然環境を破壊する事から使用禁止らしい。

完全産廃属性だな。

ちなみに水と光= 聖 らしく、聖水を発生させるらしく、これは攻撃用と言うより補助や消毒に使われるらしい。


んで、確か上級者になると三属性以上の属性を合成する事が出来るようになるとか。

三属性以上の複合魔法は人によって効果が違う事があるらしく、『ファイヤーボール』や『ライト』と言ったように名前が決まった物はなく、オリジナルスペルとして扱われるらしい。

殆どの人は自分で名前を付けるのだとか。


脳内で情報を整理し終えた俺はアイザックに言う。


「複合魔法については分かった。てことで早速使い方を教えてくれ」


「分かった。まず魔法を使う際にマナから魔法へと変化する過程があるんだ。で、マナは最初は無色なんだ。火魔法を使おうとすればマナは赤色に変化する。水魔法の場合は青色になる。だからこの二つを合わせて【爆】の属性にしようと思えば発動する際にマナを半々で使わないと行けないんだ。100マナで小爆発を起こしたいとすれば、青く染まったマナを50。赤く染まったマナを50。その状態で発動すれば複合魔法が使用出来るんだ。丁度半々にしないとバランスが悪くなって本来の効果を発揮しない事があるから気をつけてね。だから最初は左手に50右手に50って感じに分けてマナを集めた方がやりやすいかもね」


「なるほどな」


それを聞いた俺は早速試してみる事にする。

取り敢えず暴発しても安全そうな【氷】を試してみる事にした。

最初という事もあり、まずはアイザックの助言通りに試す事にする。


まずは右手に風魔法特有の緑色のマナを50集める。

約一ヶ月位魔法を使っていた為、このくらいのマナの操作はお手の物だ。

そして左手には青色のマナを50集める。そして、マナを合わせて100用意した段階で魔法を発動する。


イメージするのは氷。そのまんまだが氷が出来るイメージをする。

そしてまだ、魔法の名称を知らない為適当に技名を言う。


「『アイス』!」


魔法はしっかりと発動した様で両手のマナは消えている。

そして、氷が出来たであろう場所を見る。


「あるぇ?」


俺の想像では拳大の氷が出来ているはずだったのだが、実際にそこにあったのは既に少し溶け始めた氷だ。


「うーんどうやら青色のマナが少し多かった様だね」


という事らしい。しっかりハーフアンドハーフになっていなかった様だ。


「今度こそ!」


もう一度挑戦してみるがまたしても失敗。

若干表面が溶けている。


ううむ。なかなか難しいな。


その後何回か繰り返し、漸くコツが掴め始め十個近く氷を作った所で漸く完璧な氷を作る事が出来た。


「うんうん。なかなか飲み込みが早いね。この調子なら他の複合属性も使えるんじゃないかな?」


「おぉ、まじか。なら【空】の属性のストレージってのを教えてくれ!宝石類を仕舞うのに使いたいんだ!」


「あ〜ナナシは宝石類を大量生産して地下の倉庫を宝物庫に変えたんだったね。いいよストレージについて教えてあげるよ」


「うぇーい!やったぜ!」


「まずは空間魔法の説明だけど、空間魔法は空間を操るんだ。いまいちピンとこないかもだけど瞬間移動なんかはこの空間魔法で使えるよ。まぁ難しいけどね。で、『ストレージ』っていうのは今僕達がいる次元とはちがう空間に隙間を作り物を収納する魔法だよ」


ほう、なるほど便利そうだ。


「で、ちなみに容量に関しては限界は無いよ。消費するマナは開く空間の隙間の大きさによって変わるんだ」


「というと?」


「まず、別空間に物を仕舞う為には物を向こう側に送る為の窓を作らないと行けないんだ。だから大きい物を仕舞おうと思えば大きな窓を作らないといけないから消費マナが増える。逆に細かい物なら小さい窓で良いんだ。窓は開きっぱなしにすると一分毎に開く時と同じマナを消費するから『開けたら閉める』が大切だよ。目安としては1m×1mの窓でマナを10位消費するかな。てことでさっきの容量で窓を開いてごらん」


「はいよ」


俺は早速先程の様にマナを半々で使い空間魔法を発動させる。

さっき氷結魔法で練習した事もあり今回は一発で成功する。


「うん、開いたみたいだね」


魔法が発動すると、そこには1m×1m四方の真っ黒な面が現れていた。

色々な角度で見てみたがどうやら平面になっている様だ。


「取り敢えず何か入れてみなよ」


そう言われて俺はホルスターに入っているbarrage13を抜き、真っ黒な平面に近づける。

barrage13が平面に触れるとそのままなんの抵抗もなく闇の中へと吸い込まれていく。

俺は自分の手が平面に触れる前に離す。

なんか触ると何かありそうで怖かったからだ。

平面を見てみるとbarrage13は完全に飲み込まれた様で何も見当たらない。


「次は取り出すよ?」


「お、おう」


窓を開けるのにマナを使うだけで取り出すのも入れるのも自由だそうだ。

ちなみに取り出し方は、この真っ黒な平面の中に手を突っ込み引き出すらしい。

頭の中で取り出したい物をイメージすれば手のすぐ近くに現れるらしい。


「いきます!」


俺は勇気を振り絞り窓の中へ手を突っ込む。

窓の中は、なんというか少し粘り気のある水の中に手を突っ込んだ様な感じであまり気持ちの良いものではない。

俺は頭の中でbarrage13を思い浮かべる。

するとすぐに手に触れる硬い感触に気が付く。

俺はそれを掴み引っ張り出す。

粘り気のある水の中の様なのだが全く抵抗は感じること無く取り出す事が出来た。


俺は取り出したbarrage13をまじまじ見ながら何処かおかしい所がないか確かめる。

取り敢えず壁に向かって発砲し、撃てるかどうかの確認も行う。


「問題ない様だね。これで君の宝石類を仕舞うことが出来るね。あ、でも仕舞った物を覚えておかないとダメだよ?一応大まかなイメージでも取り出せるけど完全に忘れちゃうと仕舞いっぱなしになっちゃうからね」


「分かった。にしても『ストレージ』か、めちゃくちゃ便利やん」


「まぁね〜。みんなこの魔法は便利だから重宝してるよ」


使ってみた事で、その有用性とどれだけ便利なのかを察する事が出来た。

恐らくこれを使えば三日後の試験もクリア出来るはずだ。


「てことで、筋トレをしようか」


「いや、何がてことで なんですかいアイザックさん?」


「僕は君の頼みで複合魔法を教えた。で、君はその対価として筋トレさ」


「まじっすか…」


そして、その日もいつも通り筋トレをさせられクタクタになりながらも訓練を終えた。

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閉ざされた星空 ヨコチチウム @yokotiti

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