第23話
訓練四日目。午前は筋トレと魔法の練習、午後は筋トレと銃の射撃訓練、といった内容だった。
まずは基礎体力が必要な事と、ある程度魔法の熟練度を上げるのが先決らしく同じ訓練内容が暫く続く事になった。
訓練六日目もこれまでと同じ訓練内容であった。
そろそろ俺としては飽きてきたのだが、アイザック曰く大切な事だからしっかりやらないといけないらしい。
しかし、遂に六日目だ。
六日目が何なのかというと、訓練期間は一週間に一日休みがあるのだ。
つまり明日はここに来てから初めての休みなのだ!
勿論、用事などある訳なく昼過ぎまで寝る事も可能だ。今から楽しみで仕方が無い。
筋肉を酷使する訓練がやっと終わり、俺はくたくたになりながら部屋に帰ってくる。
「はぁぁ、疲れたぁあ」
部屋に戻るなり口から自然とそんな言葉が出てくる。
しかしそれも仕方の無い事だろう。何故なら、中学時代高校時代共に部活に入っていなかったし、体育の授業も殆ど怠けていた為、運動する事に全く慣れていないのだから。
今日はコタツに先に入らず、真っ先に風呂へと向かう。
訓練で汗を大量にかいているからだ。
タオル等である程度は拭き取ってはいるが、それでも身体中がベタベタするので気持ち悪いのだ。
それに、こんな身体でコタツに入るなんてコタツ様に対して失礼にあたる。
そんな訳で風呂に入り、寝る準備もついでに済ませるとコタツへとダイビングする。
テレビを付けているのにも関わらずコタツに埋没し、思考に耽る。
明日は休みかぁ…何すっかなぁ。
あ、そういえばマナって寝れば回復するんだよな…
マナが上限いっぱい溜まったらそれ以上は回復しないんだよな。
その事実を思い出した俺はスマホゲームのスタミナみたいだなと思う。
それと同時に勿体ないなとも考える。
スマホゲームでいうところのスタミナ等は、上限いっぱいで回復を辞めてしまう為、定期的に使わないと損なのだ。
その事実に思い至った俺は、寝る前にマナを使う事に決める。
しかし、そう決定したのは良いが何に使うべきか…
やはり『鉱物創造・支配』を使い俺の鉱石コレクションを増やすべきか。
その考えに至ると俺は早速コタツの中から出ることなく『鉱物創造・支配』を使用する。
この部屋の登録をする際、室内で魔法や祝福を使って損害等を発生した場合は処罰があるという表記を読んだはずなのだが、ナナシの頭の中には既にこれから作り出す宝石類の事で一杯な為そんな事はお構い無しだ。
ふ〜ん、ふふ〜ん。
そうと決まれば俺は早速宝石を作り始める。
初めは律儀に「クリスタルクリエイト」と口で言っていたが、途中から面倒臭くなり止めて代わりに鼻歌を歌いながら思い付く宝石を片っ端から作っていく。
『鉱物創造』を使えば人の手では加工が難しい宝石や、物理的に作り出すことが不可能な形状の宝石等も作る事が出来る。
サファイアのネコを掌サイズで作ったり、赤ちゃん向けの玩具のオーボールの様に網目状になったルビーの中にダイアモンドのボールを入れてみたり、純金をダイアモンドでコーティングしたりと思い付く限りの事を試す。
他にもダイアモンドの不純物の割合を『鉱物支配』で操作し、ピンクダイアモンドやイエローダイアモンド等カラーバリエーションを増やしてみたりもする。
自分の周りが宝石だらけになると、地下室に運び丁寧に保管する。
無造作に保管する訳にもいかない為、まだまだ余裕のあるマナを使い地下室にダイアモンド製の棚を作る。
宝石を保管すると同時に飾るため一つ一つのスペースは小さめに大量の宝石を保管できる作りにする。
地下室の天井まで高さを充分に使い作っている為、手の届かない部分には『鉱物支配』を使い、浮かばせて宝石をしまっていく。
マナを全て使い切ってしまうと危ないらしいので、取り敢えずマナを10残し終了する。
ここまでマナを消費したのは初めてだが、心無しか疲労感がある気がする。
しかし、宝石を延々と作っては地下室に運び、途中からは面倒臭くなり地下室で宝石を作っていた疲れな気もする。
地下室のスペースはテニスコートと同じ位の広さで高さは3.5m位とそこまで広くなく、今日作った宝石類だけで既に十分の一程埋まってしまっている。
このペースで行けば後十日で地下室が宝石で埋まってしまう。
地下室が使えなくなったとして、空き部屋が三部屋程ある為、そこも宝石展示室とした場合プラス十五日位か…
早めにマナの消費手段を考えておかねば。
マナを使い切って、満足した俺は今日作った宝石類の中でも自信作であるハリネズミを持ってリビングへと戻る。
なんとこのハリネズミ、背中の針を一本ごとに使う宝石を変えており、背中がレインボーになっているのだ。しかも、背中の針は本物と大差無い様に鋭くしてある。殺傷力もあるなかなかの自信作だ。
俺はコタツに入ると机の上にレインボーなハリネズミを置き心ゆくまで堪能する。
翌日、窓から入る明かりによって目が覚める。
目を開けると外は既に明るく、朝であることを察する。
どうやら、いつの間にか寝てしまっていた様だ。
時間を確認すると昼の十一時。
特にすることも無い為、昨日の夜に癖がついてしまったのかボケーッとしながらも回復したマナを使い宝石類を生み出していく。純金のインゴットを作り、ダイアモンドのインゴットも作る。
意識が完全になった時には既に十二時。更に自分の周りには宝石類が溢れていた。
時間も時間な為、お腹が空いている事に気が付く。
俺は量産された宝石類を地下室に運ぶと、財布だけを持って食堂へ向かう。
食堂へ着き、配膳コーナーに並んでいると厨房に見知った人物を見つける。
あれは、アイザックにストーカー被害を知らず知らずの内に受けているルカちゃん。
今日もお仕事か、大変だな。
俺は昼まで寝たにも関わらず、欠伸をしながらそんな事を考える。
いよいよ、自分の料理が運ばれてくる番になり今か今かと待っていると、厨房の奥から調理服に着られたルカちゃんが俺の料理を運んでくる。
「お待たせしましたっ!あ、えっと確かこの前アイザックさんと一緒にいたお兄さん!」
まさか覚えられているとは思ってもいなかった俺は、急に話しかけられた事に驚き反応が遅れる。
「ありがとう。わざわざ覚えてくれてたんだね。俺の名前はナナシだ。よろしく」
「私はルカって言います。よろしくです」
どうやら、ルカちゃんは両親がこの組織の人らしく特異能力者同士の子供は特異能力者として産まれるため、産まれは上の世界で家も上の世界にあるらしい。
ルカちゃんの話では他にもそう言った人は沢山いるらしい。
「へぇ〜まだ若いのに大変だな」
「そんな事無いですよ。職場の人はみんな優しいですし、此処には色々な人がいるから楽しいです!でも、やっぱり時々帰ってこない人もいるから寂しいです…」
そうか、みんなイリーガルと命懸けで戦っているんだから当然死者も出るか。
まだ、年端もいかない少女なのに苦労してんだな。
「ナナシさんは何処にも行かないですよね…?」
ルカちゃんはそう俺に遠慮気味に聞いてくる。
「そりゃあ勿論。俺はまだ死ぬ気は全く無いから安心してくれ。といっても俺はまだイリーガルと戦ったことすらないんだけどな」
「なら安心です。てことはナナシさんは新人さんだったんですね。私もイリーガルと戦ったことは無いですけど、みんなイリーガルは恐ろしい奴だって言ってるいるんで気を付けてくださいね」
「おう、気を付ける。じゃ、お仕事頑張ってな」
「はい!」
俺はルカちゃんと別れると空いている席を見つけ座ると料理を食べ始める。
そして、先程聞いた話を考える。
そうか、やっぱりみんな命懸けなのか。
さっきルカちゃんには死ぬ気は無いと言った。
しかし、銀行強盗の時もそうだったのだが、何故か自分の命が危険といわれてもピンと来ないんだよな。
死んだら死んだで、まぁ良いか。なんて思っている節があるのだ。
やはり、残していく人がいる訳でも無いからそんな事を思ってしまうのだろうか。
うーん分からん。まぁそのうちイリーガルと戦い始めたら分かるかもな。
そんな事を考えながら食事を済ませ、食器を返却する。
食堂以外に特に用は無かった為、マイハウスへと一直線で戻るとコタツにダイビングし食後の休憩を取る。
今日一日、殆ど何もしていないが別にそれで良い。
何もしなくても、いや何もしない事に俺は満足しているのだから。
三十分程コタツで休憩を取ると俺はテーブルの上に『スマホ君』がある事に気が付き、それを手に取ると暇つぶしに使う。
取り敢えず『調べる君』のアプリから『NESTショッピング』を開くと、減ってしまった飴の補充と新しい飴の開拓に勤しむ。
カートに入った商品の会計を済ませると、今度は『武器』の欄を覗いてみる。
『銃火器』を選択し、なんとなく自分の銃を探す。
条件を選択し調べるとすぐに見つかった。
取り敢えず値段を見てみると俺はその値段に驚愕した。
十一万円…だと!?あの銃こんなにもするのか!
俺は自室に置いてあるbarrage13を思い浮かべ驚愕する。
訓練でbarrage13を解体し、部品ごとに分け掃除やメンテナンスの方法をした為、どの様な構造になっているかは把握している。だからこその驚きだ。
barrage13をバラしてみると案外部品数も少なく、構造も簡単な物なのだ。
だからこそ、その値段に驚きを隠せない。
予想では三千円位かな〜なんて考えていた。
そのくらいの値段なら予備を沢山購入しておこうと思っていたのだが…
流石に十一万はきついっすね。
次は弾薬の方を見に行く。
弾薬もすぐに見つかり値段を確認する。
一発百二十円程度か…まぁ高い様な気もするが妥当な値段か。
まだ早い気もするが、早いに越したことは無いので弾を購入しておく。
ちなみにどのくらい購入すれば良いのか分からないので適当に二千発分購入しておく。
銃は自費購入だか、弾は経費で落ちるのでお構い無しだ。
しかし、銃の方がネックだな。予備で何丁か持っておきたいのだが…
そこまで考えて俺は凄い事を閃いてしまう。
『鉱物創造・支配』で作ればいいじゃん!
この時俺は自分の事を天才かと思ったよ。
俺は早速自室からホルスターに入ったbarrage13を持ってくる。
そして、二丁ある内の一丁はバラして中の構造を確認する。
barrage13は大体の部分は鉄製で所々合成樹脂の様な軽くて丈夫な物質が使ってある。
合成樹脂は『鉱物創造』で出せるか分からなかったので全て鉄製にする事に決める。
どうせ、『身体強化』を使う訳だし銃も小さいので全て鉄製になったところで大した問題ではない。
構造とサイズを完璧に把握し終えると、早速『鉱物創造』を使いbarrage13を完全再現する。
一応完成はしたのだが、実際に撃てるか分からないので今日の所は二丁だけ作り、明日訓練に持っていき試してみる予定だ。
はぁ〜完璧。これでお金を使うこと無く銃を手に入れられる。
満足した俺は、用済みになったbarrage13を片付け再び『NESTショッピング』を使う。
休みの日が暇なので家庭用ゲーム機を買う事に決めた。
中学時代や高校時代はゲーム好きで、ずっとやっていたのだが仕事を始めてからは、そんな時間は無くなりすっかりゲームが出来なくなっていた。
それもこれも、あの会社がブラックだったからだ。
だが今は違う。週六で仕事はあるが、朝九時から夕方五時までの残業無しである為、ゲームをする時間は十分ある。
てことでゲームしまくりまっしょい。
俺は、『NESTショッピング』でポレステ4とソフトを購入する。
届くのが楽しみだ。
その後も特に何をするでもなくゴロゴロと過ごし、久々の休日を堪能した。
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