理解

 彼女は瞼を閉じていた。


 今や彼女の肉体は一つの檻と化していた。彼女の唯一の救いは瞼を閉じた時に彼女を温かく包み込む暗闇唯一つだった。もう精霊の声は聞こえなくなった。瞼を開いてしまった時に限り見えていた現実は今や彼女のその救いにすら侵犯し、彼女の心を酷く傷付け続けていた。故に最早彼女の肉体そのものが一つの檻として彼女の魂を傷付け、苦しめ続けていたのだ。更に加えて今目を開いてしまうと更に凄惨な現実が彼女を絶望の底へと突き落とす事は必至。彼女は心に決めた。

 ある時、飼っていた鳥が鳥籠を出て脱走した事があった。以来あの鳥は見付かっていないが今の彼女にはあの鳥の気持ちが少し理解出来た気がした。


reboot

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