驚異のレトロパソコン 第5話


 驚異のレトロパソコン 第5話


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 ――2002年10月


「PC-68000は、どうだったのでしょう?」

「カタログスペックでは、ライバル機に見劣りましたから、競合されると苦しかったですよ」

「では、あまり売れなかったのでしょうか?」

「生産台数は、最初に発注した5万台のみですね。1987年の夏頃に発注して、2年かけて5万台を納品するという契約でしたが、追加の発注はしませんでした。在庫が大量に残っていましたので……」

「その5万台は、全て出荷されたのでしょうか?」

「はい、1990年の初め頃には全て出荷されました。在庫の問い合わせがかなり来ましたね」

「それで増産はされなかったのですか?」

「はい。工場との契約で5万台単位で発注することになっていたので、とてもそれから5万台が売れるとは思えませんでしたから。それに次世代パソコンの開発がほぼ終了して、その年の年末には発売する予定だったので……」

「いよいよ、32ビット時代に突入するわけですね」

「はい。終わりの始まりでした……」


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 ――1990年12月14日(金)


 この日、「ジェネシス PC-32」と「ジェネシス PC-80386」が発売された。

 これにより、ジェネシス・コンピュータの現行モデルは、全て32ビット機となった。

 PC-16シリーズとの互換性については、技術的にもコスト的にも困難とされ見送られた。

 従来シリーズについては、在庫が捌け次第、順次販売終了していった。


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◆ジェネシス PC-32(本体・キーボード・マウス) ¥298000-

 ・CPU : GOS32プロセッサ(16MHz)

 ・ROM : 4MB(G-OS32)

 ・RAM : 4MB

 ・RAMディスク : 1MB

 ・インデックスバス : 8ビット

 ・アドレスバス : 32ビット

 ・データバス : 32ビット

 ・DMAC : 8チャンネル

 ・拡張バススロット : 4本

 ・フォントROM : 1MB

 ・ハイレゾリューション・ビットマップ・カラーグラフィック

  ・表示能力 : ビットマップ1120×750ドット・4096色、ビットマップ1120×750ドット・4096色中64色×2画面、ビットマップ1120×750ドット・4096色中8色×4画面(またはモノクロ12画面)

  ・グラフィックVRAM : 1.2MB

  ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)

 ・サウンド : FM音源+PCM音源

 ・内部フロッピーディスクインタフェース

 ・FDD : 内蔵5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(2ドライブ)

 ・インタフェース : パラレルプリンタポート、RS-232Cシリアルポート、キーボード、マウス


◆ジェネシス PC-80386(本体・キーボード・マウス) ¥398000-

 ・CPU : GOS32プロセッサ(16MHz)

 ・ROM : 4MB(G-OS32)

 ・RAM : 4MB

 ・RAMディスク : 1MB

 ・インデックスバス : 8ビット

 ・アドレスバス : 32ビット

 ・データバス : 32ビット

 ・DMAC : 8チャンネル

 ・拡張バススロット : 4本

 ・フォントROM : 1MB

 ・CPU : i80386(16MHz)

  ・FPU : i80387(オプション)

  ・RAM : 4MB

  ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)

 ・ハイレゾリューション・ビットマップ・カラーグラフィック

  ・表示能力 : ビットマップ1120×750ドット・4096色、ビットマップ1120×750ドット・4096色中64色×2画面、ビットマップ1120×750ドット・4096色中8色×4画面(またはモノクロ12画面)

  ・グラフィックVRAM : 1.2MB

  ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)

 ・サウンド : FM音源+PCM音源

 ・FDD : 内蔵5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(2ドライブ)

 ・インタフェース : パラレルプリンタポート、RS-232Cシリアルポート、キーボード、マウス


◆i386SX・CPUボード ¥49800-

 ・CPU : i80386SX(16MHz)

 ・RAM : 2MB

 ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)


◆i386・CPUボード ¥99800-

 ・CPU : i80386(16MHz)

 ・FPU : i80387(オプション)

 ・RAM : 4MB

 ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)


◆MC68030・CPUボード ¥99800-

 ・CPU : MC68030(16MHz)

 ・FPU : MC68882(オプション)

 ・RAM : 4MB

 ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)


◆モデムボード(32ビット版、300/1200/2400bps) ¥19800-

 ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)

 ・ROM : 64KB(通信ソフト)


◆SCSI-2インタフェースボード(32ビット版) ¥9800-

 ・ROM : 64KB(G-OS32ドライバ)


◆内蔵5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(1ドライブ) ¥29800-


◆17インチハイレゾリューションアナログカラーモニタ ¥148000-


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「ジェネシス PC-32」と「ジェネシス PC-80386」の違いは、i386・CPUボードの機能が内蔵されているかどうかだけだった。プレーンモデルでもグラフィックやサウンドなど、一通りの機能が標準装備となった。筐体の色も同じだっため、一見しただけでは見分けがつかなかった。本体カラーは、グレーのみとなった。

 PC-32では、PC-16に比べ拡張バススロットが8本から4本に半減している。CPUボードは基本的に必須のため、実質3本なのと同じだった。しかし、他に取り付けるとしたら、SCSI-2インタフェースボードとモデムボードくらいなので、問題になることはないと思われた。


 32ビット化にあたっては、GOSプロセッサが32ビット化され「GOS32プロセッサ」となった。これ以降、区別するために従来のGOSプロセッサは、「GOS16プロセッサ」と呼ばれるようになる。

 この「GOS32プロセッサ」とセットで開発されたのが、「G32チャネルバス」だ。

 このバス・アーキテクチャは、コントロールバスの他に8ビットのインデックスバスと32ビットのアドレスバス、32ビットのデータバスで構成されているが、バースト転送時にはアドレスバスとデータバスの両方をデータバスとして利用して64ビットでデータを転送するため、更に高速なデータ転送が可能だ。そのため、理論上は最高128MB/秒の転送速度があった。バーストサイズは、1~64バイトから指定が可能だった。


 G32チャネルバスの制御は、常にDMAを介して行われる。バスマスタリングの機能も搭載されており、マルチタスクを意識した設計となっていた。

 8ビットのインデックスバスは、GOS32プロセッサ、DMAC共にサポートしており、G32チャネルバスのバス上に接続された256個までのハードウェアを識別できる。

 また、従来機では、GOSプロセッサが行っていた入出力の転送制御を8チャンネルのDMACが代わりに行う方式となっている。

 バスマスタリング時には、デバイス側に搭載されたDMACが転送制御を行う。


 G32チャネルバスに接続されるデバイス等のハードウェアには、G-OSコマンドに代わりG-OS32ドライバが搭載されることになった。

 G-OSは、コマンドライン型の簡易OSからシンプルなGUIを持つG-OS32に進化した。


 G-OS32は、通常のOSとはかなり異なった方式のOSだった。

 例えば、アプリケーションソフトのプログラムを実行する場合、プログラムはシステムCPUのGOS32プロセッサではなく、CPUボード上のCPUにより実行される。基本的に複数のプログラムを実行することはできず、一見シングルタスクOSのようだが、CPUボードを複数接続していれば、複数のプログラムを同時に実行することができるのだ。

 また、プログラムを実行している最中にデスクトップからファイルのコピーなどを行うこともできた。

 そういった処理は、GOS32プロセッサにより実行される。


 ◇ ◇ ◇


 G-OS32には、「システム・エージェント」と呼ばれるファイルマネージャが搭載されており、GUIでファイル操作を行うことができた。

 例えば、買ってきたアプリケーションソフトを起動する場合、ソフトのフロッピーディスクをドライブにセットして、デスクトップ上からそのFDDを開き、システム・エージェントでプログラムファイルを起動するとアプリケーションソフトのウインドウが開いてソフトが起動する。

 GOS32プロセッサは、スーパーバイザーモードのようなプロセッサモードを搭載していないシンプルなCPUではあったが、CPUボード上のCPUで動作するアプリケーションソフトのバグでプログラムが暴走しても、G-OS32には影響が無いため、タスクを安全に終了させることができた。


「ジェネシス PC-32」と「ジェネシス PC-80386」は、従来シリーズとの互換性が全くない。

 周辺機器も使えず、ホビー向けではなくビジネス向けモデルとして開発された。

 GUIを搭載し、1120×750ドットに対応したハイレゾリューションモニタが必須となっている。

 それにより、DTPなどの分野での利用を期待されたが、ハードディスクドライブを内部に搭載できるように設計されておらず、ハードディスクを使うためには、SCSI-2インタフェースボードを経由して外付けHDDを接続する必要があった。


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