驚異のレトロパソコン 第4話


 驚異のレトロパソコン 第4話


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 ――2002年10月


「かなり、お安くなりましたね」

「はい、半導体価格が下落したこともありますが、コストダウンして薄利多売路線に方針転換したことも大きいです」

「具体的には、どういったコストダウンをされたのでしょうか?」

「生産方式を変更しました。今までは、少数の部品を購入して、外注の工場で少しずつ生産して貰っていたのですが、部品を大量に買い付け、生産を一括して請け負って貰うことで安く作れるようになりました。90年頃に一世を風靡したワープロ専用機と同じような生産方式ですね」

「自社で工場を持つことはされなかったのでしょうか?」

「はい。組み立て工場を自社で持つという計画もあったのですが、生産を任せていた工場が大規模な受注にも応じられるように新工場を建設してくれることになりまして、そこに出資することになったのです」

「オプション類もその工場で生産されていたのでしょうか?」

「いえ、オプション類は、マニュアルと一緒に梱包してシールを貼るだけですから、社員総出で私どもがやっておりました」

「それは、大変そうですね」

「新製品が発売されるときは大変でしたが、普段は手の空いたときや交代で残業して作業する程度でした。オプション類はそれほど売れるものではありませんから」


 渡部は、話題を変える。


「PC-80は、かなり売れたのではありませんか?」

「1986年に生産終了するまでの累計生産台数は20万台でした」


 PC-80の成功により、会社は急激に大きくなった。数年で東証二部に上場するまでに成長したのだ。

 1986年には、佐藤の娘・沙織が仲元新市と結婚した。

 振り返ってみると、佐藤にとって、この時期が一番追い風が吹いていたと思う。


「1986年に生産を終了されたのですか? 1987年まで販売されていたと聞いておりますが」

「はい、お恥ずかしながら販売台数の読みを誤りまして、大量の在庫が発生してしまったのです」

「それは、どうしてでしょうか?」

「PC-80は、発売から1年で10万台近く売れたのです。当初は、ライバル機が高価だったため、相対的に人気が高かったのだと思います。それが、1985年の後半になると、次々に低価格のライバル機が登場したため、販売台数が急激に低下しました。5万台の在庫を用意していた発売当初は、年末までにバックオーダーを抱えるほどだったのですが、1年後の年末商戦では2万台も売れませんでしたからね」

「それで、その大量の在庫はどうされたのでしょうか?」

「何とか1987年の終わり頃までに出荷することができました。ですから、PC-80の販売台数は、20万台弱でしょう」

「よく在庫を捌けましたね。ディスカウントされたりしたのでしょうか?」

「いえ、何かのゲームソフトでPC-80版の出来が良いと評判になったことで、人気が戻ったようです」

「もしかして、それがあのパソコンの開発に繋がったのでしょうか?」

「ええ、おっしゃる通りです……」


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 ――1987年12月11日(金)


 この日、「ジェネシス PC-68000」と「ジェネシス PC-16mk3」が発売された。

 佐藤たちは、ホビー向けのPC-80がかなり成功したため、高級ホビーパソコンとしてPC-68000を開発した。

 この当時は、ホビーパソコンが16ビット化して多色化するなど高級指向に向かっていたこともあり、競合機が多かった。


 ラインナップは、以下の通りだ――。


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◆ジェネシス PC-16mk3(本体・キーボード) ¥99800-

 ・CPU : GOSプロセッサ(8MHz)

 ・ROM : 32KB

 ・RAM : 32KB

 ・RAMディスク : 256KB

 ・キャラクタROM : 8KB

 ・キャラクタRAM : 6KB

 ・テキストVRAM : 8KB

 ・アドレスバス : 20ビット

 ・データバス : 16ビット

 ・拡張バススロット : 8本


◆ジェネシス PC-68000(本体・キーボード) ¥298000-

 ・CPU : GOSプロセッサ(8MHz)

 ・ROM : 32KB

 ・RAM : 32KB

 ・RAMディスク : 256KB

 ・キャラクタROM : 8KB

 ・キャラクタRAM : 6KB

 ・テキストVRAM : 8KB

 ・アドレスバス : 20ビット

 ・データバス : 16ビット

 ・拡張バススロット : 4本

 ・漢字ROM : 256KB(JIS第一・第二水準)、VRAM:8KB

 ・CPU : MC68000(8MHz)

  ・RAM : 2MB

  ・ROM : 16KB(G-OSコマンド)

  ・BASIC ROM : 32KB

 ・ビットマップ・カラーグラフィック

  ・表示能力 : ビットマップ640×400ドット・4096色、ビットマップ640×400ドット・4096色中64色×2画面、ビットマップ640×400ドット・4096色中8色×4画面(またはモノクロ12画面)

  ・グラフィックVRAM : 384KB

  ・スプライトRAM : 48KB(16×16ドット・4096中64色・256個)

  ・ROM : 32KB(G-OSコマンド)

 ・サウンド : FM音源+PCM音源

 ・FDD : 内蔵5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(2ドライブ)

 ・インタフェース : パラレルプリンタポート、RS-232Cシリアルポート


◆Z80・CPUボード ¥9800-

 ・CPU : Z80A(4MHz)

 ・RAM : 64KB

 ・ROM : 8KB(G-OSコマンド)

 ・BASIC ROM : 16KB


◆MC6809・CPUボード ¥14800-

 ・CPU : MC68B09E(2MHz)

 ・RAM : 64KB

 ・ROM : 8KB(G-OSコマンド)

 ・BASIC ROM : 16KB


◆i286・CPUボード ¥99800-

 ・CPU : i80286(8MHz)

 ・RAM : 2MB

 ・ROM : 16KB(G-OSコマンド)

 ・BASIC ROM : 32KB


◆MC68000・CPUボード ¥99800-

 ・CPU : MC68000(8MHz)

 ・RAM : 2MB

 ・ROM : 16KB(G-OSコマンド)

 ・BASIC ROM : 32KB


◆RAMディスクボード ¥19800-

 ・RAMディスク : 256KB


◆カラーグラフィックボード ¥19800-

 ・表示能力 : 640×400ドット・カラー1画面(またはモノクロ3画面)

 ・グラフィックVRAM : 96KB

 ・ROM : 16KB(G-OSコマンド)


◆ビットマップ・カラーグラフィックボード ¥49800-

 ・表示能力 : ビットマップ640×400ドット・4096色、ビットマップ640×400ドット・4096色中64色×2画面、ビットマップ640×400ドット・4096色中8色×4画面(またはモノクロ12画面)

 ・グラフィックVRAM : 384KB

 ・スプライトRAM : 48KB(16×16ドット・4096中64色・256個)

 ・ROM : 32KB(G-OSコマンド)


◆FM音源サウンドボード ¥9800-

 ・サウンド能力 : FM音源3音+8オクターブ矩形波3音+ノイズ1音(SSG)

 ・内蔵モノラルスピーカー搭載


◆PCM音源ボード ¥29800-

 ・サウンド能力 : PCM音源2チャンネル

 ・バッファRAM : 64KB


◆漢字ROMボード ¥19800-

 ・ROM : 256KB(JIS第一・第二水準)

 ・漢字VRAM:8KB


◆パラレルプリンタインタフェースボード ¥6800-


◆RS-232Cシリアルインタフェースボード ¥6800-


◆GPIBインタフェースボード ¥6800-


◆ジョイスティックインタフェースボード(ATARI準拠、2ポート) ¥6800-


◆モデムボード(300/1200/2400bps) ¥19800-

 ・ROM : 32KB(通信ソフト)


◆5インチ2HD/2Dフロッピーディスクインタフェースボード ¥6800-


◆SCSIインタフェースボード ¥9800-


◆データレコーダ(I/Fボード付き) ¥12800-


◆外付け8インチフロッピーディスクドライブ(I/Fボード付き、2ドライブ) ¥398000-


◆外付け5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(I/Fボード付き、2ドライブ) ¥99800-


◆内蔵5インチ2HD/2Dフロッピーディスクドライブ(1ドライブ) ¥39800-


◆15インチカラーモニタ ¥49800-


◆15インチアナログカラーモニタ ¥99800-


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 このとき、「ジェネシス PC-16mk3」と「ジェネシス PC-68000」が発売された。

 PC-16mk3は、PC-16mk2の後継機で価格は据え置きだが、RAMディスクの容量が256KBに拡大されている。

 PC-68000は、PC-80の後継機だが互換性はない。しかし、Z80・CPUボードとカラーグラフィックボードを取り付ければ、殆どのソフトが利用可能だった。

 主な変更点は、CPUに8MHzのMC68000が採用され2MBのメモリが搭載されている点だ。グラフィック機能も4096色のビットマップグラフィックが利用でき、ゲーム用に強力なスプライト機能が搭載された。


 ビットマップグラフィックとは、VRAMのデータを格納する方式のことで、画面上のドットの色が格納されるVRAMと一対一で対応しているものをビットマップ方式、単色のVRAMを重ね合わせて色を表現する方式をビットプレーン方式と呼ぶ。

 本来は文字の表示方式のことで、キャラクタコードをテキストVRAMに書き込む方式に対して、文字の画像情報をグラフィック画面のようなVRAMに書き込む方式のことを指していた。

 しかし、グラフィック画面の色数が増えていくと、グラフィックもビットマップ方式とビットプレーン方式に区別されるようになったのだ。

 特徴としては、ビットプレーン方式はプレーン単位での高速スクロールに向いているが、色数の多い画面の部分的な書き換えは苦手である。


 他にもPC-68000では、2チャンネルのPCM音源が採用され、FDDが2HDに対応した。

 また、2MBのメモリは、当初は十分に思われていたが、増設できないという点が後に問題となる。

 確かにゲーム等には2MBで十分なのだが、GUIやDTPソフトなどを使おうとすると2MBでは足りないのだ。

 G-OSでは、メモリ等の搭載量が変わっても対応できるように起動時にチェックする仕組みになっていたので、後にマニアたちの間では、メモリチップを大容量のものに変更する改造が流行ったが、公式にはPC-68000のメモリ増設モデルは発売されなかった。


 この年のラインナップでは、CPUボードに16ビットの高級CPUを搭載したものが発売されている。

 また、パソコン通信が盛んになってきた時期だったのでモデムボードが発売された。

 他にもSCSIボードもラインナップに加わった。これにより、ハードディスクやスキャナなどの接続が容易となった。


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