第4話 「2017年 名刺交換?」

 カオルという少年をひとりで帰すわけにもいかず彼女は、あのあと自分の家に泊めてしまった。取り敢えず公園での話を反芻すると13才という歳でかなりつらい経験をしてきたらしい。国内有数の資産家に生まれ、両親は口を開けば出世と勉強のことばかり。人間関係までもが制限されていた。

 そんな窮屈な家庭のなか、両親に内緒で彼女をつくった。優しく気立てのよい年上の彼女だった。しかしその裏で広がっていく傷にカオルは気付かない…。


 「親御さんには連絡したくないのね?」布団をしきながら、彼女は目の前で縮こまる少年にたずねた。

 「今は家にいないので…あっ!」

 「どうしたの?」びっくりして彼女は枕をゆかに落とした。


 「名前…お姉さんの名前は?聞いてなかったので」

おどおどとカオルが口を開いた。

 「お姉さんって歳じゃないわ名前は、速水文子です」

つとめて笑顔で彼女は答える。


 

 

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