第2話 「2017年 深夜」

 見間違いではない。少年はロープの輪っかに今正に首をかけようとしていた。

 「待ってよ!止めなさいっ!!」

悲鳴に近い声をで彼女は叫びながら走った。

 一瞬、驚いた顔をみせた男の子はすぐに悲しそうな顔をした。彼女はそんな顔を今まで見たことがなかった。街灯に照らされて二人の顔は白く輝いていた。


 「僕は…誰かに知っていてほしかったんです」

震える声が話し始めた。人生で一番辛かった時の記憶、それが今も続いている事。少年は過去の傷を絞り出していく。

 大好きだった人を傷つけたこと。自分がそれを知らなかったこと。全てを投げ出したくなって、死にたくなった、と。いつしか彼女は話に聞き入り、最後に

口を開いた。

 「人って不思議な生き物だよね…平気で他人を傷つ

けるしね」隣で男の子しゃっくりをする。

 「傷つける事を知りながら、同時に許されることに怯えるものよね」

 「貴方、名前は?」

男の子が答えた。声はまだ震えてる。

 「ユキ…ユキ、カオルです」

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