時間も国境も、なにもかもがクロスオーバーしていく現代社会。
あまりの忙しなさに、うっかりしていると、ここにあるうちのどれかが消えてしまうのではないか…
そういう危惧も含めて、現代の世界がこの短い小説に詰まっています。
学校司書の忙しい日常も、近所付き合いに奮闘する「父」も、味噌作りに励む学生達も、国際交流でふるまわれた味噌汁のように、相容れないはずのものが混ざり合って、それが、なんとも甘酸っぱい「日常」の香りでさっと包まれる…ラストシーンも見事でした。
蝋燭の火をふっと吹き消して、煙と香りだけが残ったような、なんとも言えない余韻を味わいました。
「味噌には麹を使う」と信じ切っていた自分が恥ずかしくなる、貴重な昔ながらのレシピも、目からうろこです。
この作者にしか描けない世界の数々を、心温まるストーリーとして読ませてもらえることに感謝です。
続きも心待ちにしています!