第41話 相麻沙羅
沙羅の様子が変わったことは、浅葱はなんとなく気づいていた。しかし、それが悪魔と契約したことであったことは全く気付かなかった。
沙羅が幼い頃から、浅葱は沙羅の傍にいた。ハイテンションな言動が目立つが、決して行動は常識の範囲内を超えることはしなかった。
――それが、変わったものだ。悪魔と契約などしてみせるとは。いや、今までが変わらな過ぎただけか。
相麻沙羅は、資産家の一族である相麻家に生まれた一人娘であった。裕福な家庭に祝福の中生まれ、幸せな人生が約束されているかに見えた。しかし、彼女を大いなる運命が揺さぶった。
生まれてすぐ、出産により体調を崩した彼女の母親が死亡した。そして、相麻家がしだいに傾いていた。当時相麻家に勤めていた家事手伝いや相麻財閥の関係者は、沙羅を呪いの子だと噂した。そのことは父親の耳にも入っており、フォローをしなければならないと思っていたが事業に次ぐ事業、そして増えていく借金で機微が回らず、それどころではなかった。
辛うじて相麻財閥は規模を縮小することで破産を免れることはできたが、そのころには沙羅は父親とすっかり疎遠になっていた。
他の家事手伝いが辞表を出していく中、最後まで残ったのが、彼女の幼少期から面倒を見ていた岬浅葱であった。
当時の浅葱は、住所不定でふらっと相麻財閥に現れたところを沙羅の父親に飼われるような形で召し抱えられた。
せめて母親の変わりはしようと、泣き止まない沙羅に乳房を吸わせたこともあった。
それまでは、今時なかなかみられない乳母と子の血のつながらない親子の絆として笑い話にもなったであろう。
しかし、二人の関係は歪み始めた。
沙羅は小学校に入っても、時折夜泣きをしては浅葱に相手をしてもらう、という日々を送っていた。そして、沙羅が思春期を迎えてから、二人の関係は更にエスカレートしていくことになる。
対象を失った母性への甘え、フラストレーションからくる暴力的衝動、欲求不満から来る性欲を
、沙羅は全て浅葱にぶつけてしまっていた。そんな日々が続いていた。
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