第3話

呆然としながら片手に提灯、片手におくるみ(赤ん坊入り 注 : 女の子)を持って庭に出た。とたんに母が来た。「それ何?」母が覗き込んだ。何が何だか…「この子次代なんだってさ。産んでないのに、お乳あげただけなのにさ。お母さん、この子抱いてて!繕ってこないと!また赤ん坊来たら困る‼︎」赤ん坊は目を開けて私を見ていた。私は赤ん坊を母に渡し、暗い丸い穴にとって返した。

暗い丸い穴が閉じ、母と赤ん坊だけになった。「あなた次代なんだって、…大変!忙しくなるわ!」慌てて家に入って行った。


私は黒咲たまき。旦那有り、子供2人…さっき3人になった。実母と伯母2人も同居してる。表向きは専業主婦、裏向きは管理人兼引っ越し屋さん。裏向きの仕事が忙しい主婦?です。家族の紹介は追い追いという事で、早く繕わんとまた変なの来ちゃうかも…。

「玉虫、青糸、針亀、仕事だよ!」ワサワサと白い玉が塊になり、長い青いこよりが針亀に刺さっている針に通り、白い玉をプスプス刺して行く。青いこよりと白い玉で融け合い、布が出来て行く。結構大きく出来たな。

緑色の小山がモゾっとした。「準備万端!当代、針を持て!出陣ぞ!」苔むした亀が歩き出した。「夜明けになるわ!担ぐよ!」グイッと亀を小脇に抱え提灯を掲げ一本道を走った。亀がジタバタ暴れた「無礼者ー!」遅っせーわ爺亀が!子供産んだばかりなんだよ、疲れるわ。痺れ霧が出る前に完了するかな。「痺れ霧って何?」フンと無い鼻ならして亀が言う。

「朝露に濡れてるモノがピカピカ光るであろう?アレじゃ。モノにつく前に触れるとビリっとするんじゃ。」感電じゃん!マズイマズイ。人には耐えれません。「洗われるように綺麗になるんじゃあ。」目がキラッキラッしてるよ成仏するんじゃないの?人では無いナニかだけど。…そんな簡単にはいかないよね。


「ただいまー。疲れたー。」ギャー‼︎ギャー‼︎ただならぬ叫びが出迎えた。「たま…早くーー!おっぱい‼︎」旦那が叫んだ。

ものすごく力強く吸い付かれ、息子の授乳完了。スヤスヤと速攻で寝た。

「どうなってんの、子供増えた?双子だったっけ?」……「うん、双子だったよ、大変だけど頑張ってねパパ。」ニッコリ「ゴメン、寝かせて。」

「明日、名前決めような。」「うん。」明日やる事いっぱい出来た…限界…5秒で寝落ちした。


「ごめんくださいよ、おいでるかね。」「はーい。あらー佐藤さんいらっしゃい。」隣のおばあが来た。母と話し込んでる、なかなか帰る様子ではなかった。「おはようございます。おばさん。」あくびをこらえて客間を通り過ぎようとした。「いい子産んだねえ、双子っていうでしょもっと小さいかと思ったのよ。」いいえーひとりがふたりに増えました。言えんけど。佐藤のおばあは1時間ほど喋って帰った。「お迎えは中々来そうにないよね、ああいうのって。」「口悪いわね〜お祝い頂いたのよ。」ああ、お祝いね。お祝い…おいわ…「あーー‼︎あの子が次代ってなんでー?!」

「あの子にお乳あげたんでしょ、あそこで。」やったよ、だって泣いてたんだよ、腹へってるんだと思って。母が眉間にシワ寄せてうーんと唸りながら「お乳って血からできてるんだよ、それをあそこで飲ませたからでしょう。外なら関係なくすんだかもしれないけど、あそこで飲ませたからウチの子に認定されたんだろうね。」と言った。「親が心配してるよ、どうしよ。」母がポカンとしていた。「つーかどこから来たのかなぁ。」

「あの袋がどこをどう通ってるか誰も知らないと思うんだけど。見ただけの大きさでもないし、ほつれた場所がどこに通じてるのかなんてわかんないわよ。」「ウチの子になっちゃっていいのかどうか…。」スタスタと母が歩いて戸を開けた「もう忘れてるでしょうよ。子供がいたなんて思いもしない、縁が切られたんだよ。それでなくても捨て子だよ。」お茶を持って来た伯母さんが入ってきてそう言った。「ありがとう姉さん。」伯母さんも話に加わった。「ウチの子だよ、手続きしないとね。そういう事が得意なのはふすま障子だよ。たまちゃんが頼んでね。」そうかウチの子か。納得してしまった。「心配しなくても、周りなんて気がつかないよ。役場なんて増えたってよろこぶくらいやろ。ボンクラばっかりだよああゆうとこは。」ブラックな母になった。


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